引地渉

引地渉（ひきち わたる、1971年 - ）は、福島県出身の日本のイラストレーターです。埼玉大学教養学部とセツ・モードセミナーで学び、紙類を素材としたコラージュ作品を中心に制作活動を行っています。

作風と特徴

引地渉の作品は、紙の持つ素材感を生かしながら、緻密で幻想的な世界観を表現している点が特徴です。ノスタルジックな雰囲気や、どこか懐かしい風景をコラージュによって再構築し、見る者の心に深く響く作品を生み出しています。色彩の美しさや、光と影の表現も卓越しており、独特の空気感を醸し出しています。

受賞歴と個展

2004年には、HBファイルコンペで大賞（鈴木成一賞）を受賞し、その才能が広く認められました。その後、HBギャラリーやギャラリー猫車、trayなど、数々のギャラリーで個展を開催し、精力的に作品を発表しています。

主な個展:
2004年8月 - 「いつか見た空の続きを」（HBギャラリー)
2005年6月 - 「森を抜ける風は」（ギャラリー猫車）
2005年11月 - 「Phantom Escargot」（tray）
2007年6月 - 「楽園のシルエット」（HBギャラリー）
2010年5月 - 「白昼模作」（tray）
2011年10月 - 「焦燥とロマン」（HBギャラリー）

装画の仕事

引地渉は、書籍の装画も数多く手がけています。小説の世界観を的確に捉え、作品の魅力を最大限に引き出す装画は、読者からの評価も高く、書籍のイメージを印象付ける役割を担っています。

主な装画作品:
大崎善生著『孤独か、それに等しいもの』 角川文庫、2006年
伊藤たかみ著『八月の路上に捨てる』 文春文庫、2009年
* 森博嗣著 Wシリーズ 講談社タイガ、2015年〜2018年

雑誌掲載

玄光社の『illustration (イラストレーション)』では、HOW TO DRAWのコーナーで、引地渉の制作技法が紹介されています。コラージュの技法や、作品に対する考え方などを知ることができる貴重な記事です。（2009年7月号）

引地渉の作品は、見る者に静かな感動と、心の奥底に眠る記憶を呼び起こさせます。今後の活躍がますます期待される、注目のイラストレーターです。

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