引揚援護庁

引揚援護庁の歴史と役割

引揚援護庁（ひきあげえんごちょう）は、1948年5月31日に設置された日本の厚生省の外局であり、戦後の引揚げや復員に関連する行政事務を担当しました。この機関の設立は、第二次世界大戦によって海外に取り残された日本人の帰国に対応するために必要不可欠でした。

引揚げの背景

第二次世界大戦が終結した際、約660万人の日本人が海外に残されていました。戦後、日本政府はこれらの国民を強制的に帰国させるための施策を講じました。この引揚げは、多くの生活基盤を失った人々にとって非常に重要な課題であり、国は迅速に対応する必要がありました。

さらに、陸海軍の関係者である軍人や軍属も民間に復帰させる「復員」活動が行われることとなりましたが、当初は複数の省庁がそれぞれの業務を担当しており、連携が取れていませんでした。このため、GHQの最高司令官であるダグラス・マッカーサーは、これらの業務を一つの官庁にまとめるよう指示しました。

設立の経緯

そのため、日本政府は内閣総理大臣幣原喜重郎の下、厚生省を主たる機関として指定し、1945年11月に「地方引揚援護局」を設置しました。1946年3月には、厚生省の外局として「引揚援護院」が設立され、ここに地方引揚援護局の業務が合併されました。1948年5月には引揚援護院と第一復員局が一緒になり、引揚援護庁が誕生しました。この新しい庁は、日本に引揚げてくる人々の支援業務を統括することとなりました。

引揚援護庁の役割

引揚援護庁は、引揚げ者の受け入れ及びその後の生活支援に関する様々な業務を行いました。引揚げが進むにつれ、600万人を超える人々の帰国をサポートし、その受け入れ体制を整えることは国にとって重要な課題でした。また、旧海軍に関わる復員業務も引き継ぎ、様々な社会的な支援策を講じました。

廃止とその後の展開

1954年には、引揚援護庁がその役割を終え、厚生省本省に吸収されて「引揚援護局」が新たに設置されました。引揚げの状況がほぼ安定した後も、援護局は発展し、1961年には「援護局」と改称され、1980年代には中国残留孤児の支援においても注目を浴びました。1992年からは、母体である社会局と統合され「社会・援護局」となり、さらに2001年の省庁再編により、現在の厚生労働省社会・援護局へと進化しています。

歴代長官

引揚援護庁には歴代の長官が存在し、初代の斉藤惣一をはじめ、数名の長官がその役割を担いました。長官たちは、引揚げ者の支援策を講じるとともに、復員や引揚げの実態に則した政策形成に寄与しました。これにより、戦後の日本社会における困難な状況を克服するための土台が築かれました。

引揚援護庁は、日本の戦後復興の重要な一翼を担った機関として、現在もその影響を残す存在です。

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