弘実

弘実（こうじつ）について

弘実（こうじつ、生没年不詳）は、江戸時代中期に活動した真言宗の僧であり、但馬満福寺の53世住職として名を馳せました。彼の字は不虚（ふきょ）で、地元では「慈雲尊者」として親しまれています。また、彼は池田草庵の師でもあり、豪快な学識と多才な才能を持つ僧侶でした。

修行時代

弘実は幼少期に但馬国の有名な満福寺に入山しました。彼はそこにおいて僧名「弘実」を名乗ります。修行に励む一方で学問にも情熱を注ぎ、兄弟の弟子たちの中でも特に優れた成績を収めました。その実力は、彼らの中で上位3人に数えられるほどでした。彼の学問への関心は、後の彼の教えにも大きく影響を与えたことがうかがえます。

陽明学との関わり

当時の江戸幕府は、儒学の一つ、朱子学を重視し、その普及を図っていました。しかし、陽明学はその文武両道の理念から多くの日本人に支持を得ることとなり、次第に主流となりました。満福寺では、空海の開いた弘法寺に伝わる「綜藝種智院」の教えに基づき、真言宗と儒学が教授されていました。弘実とその前任の弘元は、特に儒学の重要性を説き、若者たちにその教えを広めることに力を尽くしました。自ら儒学の書籍81冊を購入し、『書経』や『四書』、さらに『老子』や『荘子』などの重要作品を揃えたのも、その一環です。

著述活動

弘実は著述活動にも意欲を示しました。『仏法太平鑑』や『秘密要鑑』、そして『真言律行問答』など、様々な著作を残しています。そのため、彼は「田舎に稀なる明僧知識」と称賛されることもありました。彼の著作は、時代の仏教教育のひとつの指針となり、多くの人々に影響を与えました。

観音堂の再建

文政8年（1825年）、弘実は満福寺の観音堂の再建に奔走しました。この再建は彼の努力の結晶であり、観音堂境内には文政9年（1826年）に建立された『流水記』の碑があります。この碑文も弘実自らによって撰文されています。

池田草庵との出会い

文政6年（1823年）、池田草庵が満福寺に入山し、弘実から儒学を学びました。天保元年（1830年）のころ、相馬九方が広谷村の大橋惣右衛門家に寄宿していたことを知り、弘実は草庵らに相馬の学問を奨励しました。その結果、草庵は天保2年（1831年）に還俗し、相馬九方の門下に入ります。草庵は儒学を深く学び、門人たちに伝え、明治の草創期においても活躍することになりました。

著書一覧

• - 『仏法太平鑑』
• - 『秘密要鑑』
• - 『悉曇章相承口説』
• - 『真言律行問答』
• - 『観音堂立替勧化帳』

主な弟子・門人

• - 法師弘珍（早世）
• - 大法師弘阿（1790年-1807年）
• - 弘勤上人（満福寺第58世住職）
• - 弘謙上人（満福寺第59世住職）
• - 池田草庵（青谿書院の創始者）
• - その他、多くの優れた弟子を育成しました。

弘実の教えと実績は、ただの僧侶にとどまらず、学問と精神の重要性を日本の社会に広めるきっかけとなりました。

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