弥五郎どん

弥五郎どんとは

南九州地方、特に宮崎県と鹿児島県に伝わる伝説の巨人「弥五郎どん」。地域によっては「大人弥五郎」や「弥五郎様」とも呼ばれ、その存在は祭りの形で今に伝えられています。ダイダラボッチのような大男で、山に腰かけて海で顔を洗うほどの巨体だったと語り継がれています。

伝説の内容

宮崎県の伝承では、弥五郎どんは、川の氾濫で困っていた村人を助け、大岩で土手を塞いだり、川をせき止めて村人に草鞋を要求するなど、時に人々を助け、時に困らせる、人間味あふれる巨人として描かれています。

また、高い山に登って雲をかき回し、雷を鎮めようとしたという逸話もあり、その行動は時に村人を驚かせたとも言われています。このように、弥五郎どんは、人間と友好的な関係を築きながらも、どこかユーモラスで、親しみやすい存在として語られています。

弥五郎どんの起源

弥五郎どんのモデルや伝説の起源は明確ではありませんが、有力な説として、奈良時代の「隼人の反乱」で、律令政府に対抗した隼人側の指導者であったというものがあります。この反乱で敗れた隼人たちの霊を弔うために行われた放生会が、現在の「弥五郎どん祭り」の起源になったとされています。

他にも、300歳まで生きたとされる伝説上の人物、武内宿禰がモデルであるという説も存在します。このように、弥五郎どんの起源には複数の説があり、その神秘性をより一層深めています。

弥五郎どん祭り

毎年11月になると、宮崎県と鹿児島県の3つの地域で「弥五郎どん祭り」が開催されます。祭りの際には、巨大な弥五郎どんの像が作られ、地域を練り歩きます。これらの弥五郎どんは兄弟であるという設定があり、それぞれの祭りで異なる特徴を持った像を見ることができます。

宮崎県の祭り

山之口弥五郎どん祭り（長男）: 都城市山之口町にある円野神社で行われる祭りです。身長4メートルの弥五郎どんは、赤い顔に黒い髭、白い麻の衣装を身にまとい、腰に二本の刀、頭から三つ又の槍を突き出しています。祭りの際は、「浜殿下り」と呼ばれる行列の先頭に立ち、円野神社から池の尾神社まで練り歩きます。この祭りは、1990年に県指定無形民俗文化財に指定されています。
田ノ上八幡神社の弥五郎人形行事（三男）: 日南市にある田ノ上八幡神社で行われる祭りです。こちらの弥五郎様は、身長6メートルと大きく、赤い顔に白い髭、烏帽子をかぶり、紫色の衣に朱色の袴姿で、腰に二本の刀、右手に槍を持っています。以前は町内を練り歩いていましたが、現在は神社境内に立てられています。この行事は、1991年に県指定無形民俗文化財に指定されています。

鹿児島県の祭り

大隅町岩川八幡神社の弥五郎どん祭り（次男）: 曽於市にある岩川八幡神社で行われる祭りです。身長4メートル85センチの弥五郎どんは、白い顔に黒い髭、梅染めの茶色い衣装を身にまとい、腰に二本の刀、両手に鉾を持っています。祭りの際には「浜下り」の先頭に立って練り歩きます。1988年に県指定無形民俗文化財に指定されています。

関連施設

弥五郎どんに関する歴史や文化に触れることができる施設も存在します。

弥五郎どんの館: 都城市にある文化施設で、弥五郎どん祭りに関する展示や解説を見ることができます。
道の駅おおすみ弥五郎伝説の里: 曽於市にある道の駅で、高さ15メートルの巨大な弥五郎銅像が設置されています。また、施設内にある弥五郎まつり館では、弥五郎どんの歴史について学ぶことができます。
曽於弥五郎インターチェンジ: 東九州自動車道にあるインターチェンジで、この地域が弥五郎どんの伝説と深く関わっていることを示しています。


これらの施設を訪れることで、弥五郎どんの伝説をより深く理解することができるでしょう。

弥五郎どんは、南九州の人々にとって単なる伝説の巨人ではなく、地域の歴史や文化、そして人々の心を結びつける大切な存在として、今もなお語り継がれています。

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