弥勒寺 (墨田区)

弥勒寺の紹介

弥勒寺（みろくじ）は、東京都墨田区立川にある真言宗豊山派に属する寺院で、山号は万徳山、院号は聖宝院です。主祀される本尊は薬師如来であり、その別名として「川上薬師」とも知られています。江戸時代には新義真言宗の触頭寺院として、寺領100石の朱印状を受け、関東の四大寺の一つに位置づけられ、格式が高い寺院として多くの信仰を集めていました。また、江戸十二薬師の一つとしても名を馳せていました。

歴史

弥勒寺は、「万徳山聖宝院」と号し、真言宗豊山派の寺院です。起源は京都にある醍醐寺三宝院にさかのぼり、後に根来寺（和歌山県）の末寺となりました。1610年（慶長15年）、宥鑁（ゆうばん）が当時の徳川家康から江戸の小石川鷹匠町（現在の文京区小石川三丁目）に寺地を受け、ここで寺院が設立されました。その後、日本橋馬喰町を経て、1689年（元禄2年）に現在の立川に移転しました。

弥勒寺の名は、当初本尊が弥勒菩薩であったことに由来しますが、8代目の清長の時代に、徳川光圀から薬師如来の像が寄進され、以降はこの像が本尊となりました。その薬師如来像は、行基の作と伝えられ、「川上薬師」とも呼ばれています。史料によると、元々は常陸国（水戸藩）にあった寺院のものであったとされています。この像は水戸光圀によって寺領が没収された際に那珂川に流されましたが、流れ着いた先で信仰を受け、弥勒寺で祀られるようになりました。

弥勒寺は、御府内八十八箇所の46番札所としても名高く、周辺の元徳稲荷や徳山稲荷と並ぶ賑わいを見せています。また、寺院内にはいくつかの塔頭が存在し、徳上院、法樹院、正福院、宝珠院、正覚院、竜光院があったことが記録に残っています。この中でも、徳上院、法樹院、竜光院は現在も独立した寺院として残っています。

境内の文化財

弥勒寺には、歴史的な文化財が数々存在します。まず、杉山和一（杉山検校）の墓があります。杉山和一は、伊勢出身の鍼灸師で、江戸幕府の第5代将軍、徳川綱吉に仕えていました。彼は1694年（元禄7年）に85歳で亡くなり、弥勒寺と江の島に墓所が建立されました。弥勒寺の墓は1924年（大正13年）に東京市の史跡に指定され、当時は笠塔婆形式をしていましたが、戦火により破損し、1960年（昭和35年）には五輪塔に変更されました。現在、東京都指定旧跡としても保護されています。

また、戦災殉難慰霊観音尊像も重要な文化財です。これは1967年（昭和42年）に建立され、太平洋戦争による殉難者を慰霊するために設けられました。彫刻家の片岡静観によって制作され、近くには3500柱の遺骨が安置されています。さらに、昭和期の書家である相沢春洋を偲ぶ筆塚も存在し、毎年11月23日には「筆供養」が行われるなど、地域の文化活動にも貢献しています。

アクセス

弥勒寺は東京都墨田区立川1-4-13に位置しており、都営新宿線の菊川駅から徒歩8分の距離にあります。歴史を感じる空間であり、訪れる人々に深い信仰と文化の香りを伝える名所として、多くの人々に親しまれています。

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