根来寺

根来寺：歴史と文化の宝庫、和歌山を代表する寺院

和歌山県岩出市に位置する根来寺は、新義真言宗の総本山として知られる由緒ある寺院です。一乗山を背に構え、その歴史は平安時代後期、高野山の僧・覚鑁（興教大師）が1130年（大治5年）に創建した小伝法院にまで遡ります。

覚鑁は、当初高野山内にあった小伝法院を、1131年（天承元年）鳥羽上皇の勅願所となり、大伝法院と改名。その後、1134年（長承3年）には金剛峯寺座主に就任し、高野山全体を掌握するほどの勢力を築きました。しかし、高野山内の旧来の勢力との対立は避けられず、1140年（保延6年）には覚鑁一門の寺院が焼き討ちされる「錐もみの乱」という事件が発生します。この事件をきっかけに、覚鑁は高野山を離れ、弘田荘内の豊福寺を拠点に、新たな寺院・円明寺を建立。これらを基盤として、一山全体を指す「根来寺」が形成されていきました。覚鑁は1144年（康治2年）、円明寺で生涯を終えます。

その後、1288年（正応元年）には大伝法院の学頭・頼瑜が寺籍を根来寺に移し、高野山から根来寺へ勢力の軸足が移り始めました。室町時代には最盛期を迎え、450から2700ともいわれる坊舎が立ち並び、一大宗教都市として栄えました。72万石もの寺領を有し、1万人を超える根来衆と呼ばれる僧兵集団を擁し、その軍事力も大きな力となりました。興味深いことに、根来寺では種子島から伝来したばかりの火縄銃を用いた鉄砲隊が組織された記録も残されています。

織田信長とは友好関係を築き、石山合戦では協力関係にありましたが、信長没後、豊臣秀吉との関係が悪化します。小牧・長久手の戦いにおいて徳川方に与したことがきっかけとなり、秀吉による紀州征伐（雑賀攻め）を招きます。1585年（天正13年）、根来寺は秀吉軍の攻撃を受け、大師堂や大塔など数棟を残して焼失しました。焼失の原因については諸説ありますが、秀吉による焼き討ち、寺衆による自焼、兵士による放火など、明確な結論は出ていません。

江戸時代には紀州徳川家の庇護を受け、伽藍の復興が進められました。また、東山天皇から覚鑁上人に「興教大師」の称号が贈られました。1976年（昭和51年）から始まった発掘調査では、400万平方メートルを超える広大な寺域であったことが判明し、陶磁器や漆器、仏具、武器など多数の遺物が発掘されました。これらの遺物は、岩出市民俗資料館で保管・展示されています。

現在、根来寺の境内は近世以前の静謐な雰囲気を保っていますが、周辺地域では図書館や資料館の建設など、文教地域化が進められています。一方で、大型道路の建設や山林の砕石場化など、周辺環境の開発も進んでおり、根来文化の保護・継承が課題となっています。

根来寺の境内には、大門、不動堂、大伝法堂、大塔、大師堂、光明殿などの重要建造物が残り、これらは歴史的価値が高く評価されています。特に大塔は、高さ40メートル、幅15メートルの木造多宝塔としては日本最大級で、国宝に指定されています。また、境内には江戸時代に造られた美しい庭園も存在し、国の名勝に指定されています。

根来寺は、単なる寺院としてだけではなく、歴史、文化、そして自然が調和した貴重な場所です。その壮大な歴史と美しい景観は、多くの観光客を魅了し続けています。交通アクセスはJR和歌山線岩出駅からバス、または岩出市巡回バスが利用可能です。また、南海本線樽井駅やJR阪和線和泉砂川駅からもバスでアクセスできます。

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