弦楽四重奏のための4つの小品 (メンデルスゾーン)

弦楽四重奏のための4つの小品 作品81

フェリックス・メンデルスゾーンによる弦楽四重奏のための4つの小品 作品81は、作曲者の死後、1849年に出版された作品集です。これは、生前に発表されなかったメンデルスゾーンの遺稿の中から、弦楽四重奏のための小品が出版元によって選ばれ、まとめて世に出されたものです。そのため、収録されている各曲は、作曲された時期が大きく異なっています。

最も早く書かれたのは第4曲で、メンデルスゾーンがまだ10代だった1827年11月に遡ります。この曲は作曲技法を磨くための習作という意味合いが強いと考えられますが、すでにこの若さで高度な対位法を駆使できる能力を備えていたことを示しています。次に作曲されたのは第3曲で、1843年の作品です。この曲は、楽器間の声部バランスや音色の扱いにおいてメンデルスゾーンらしい洗練された感覚が光っており、翌年に作曲されるヴァイオリン協奏曲への予備的な試みと捉えることも可能です。残る2曲、第1曲と第2曲は、メンデルスゾーンが死去した年である1847年に書かれました。これらは、新たな弦楽四重奏曲の一部として構想されていた楽章であったと考えられています。

作品は以下の4つの楽曲で構成され、全曲を通して演奏時間は約18分です。

第1曲：Tema con variazioni: Andante sostenuto
ホ長調、2/4拍子の主題と変奏曲です。冒頭に提示される主題に続き、5つの変奏とコーダが演奏されます。主題の繰り返しは行われず、そのまま変奏へ移行します。第1変奏ではヴィオラが主旋律を担うなど、ヴィオラの活躍が特徴的です。第2変奏ではテンポが上がり三連符が多用されます。第3変奏ではヴァイオリンによる細かな16分音符が中心となり、続く第4変奏ではその16分音符がチェロに引き継がれて自由な展開を見せます。ヴァイオリンの短いカデンツァ風のパッセージを経て、曲は6/8拍子、プレストの急速な第5変奏（ホ短調）へ転じます。元の拍子とテンポに戻ると主題が回想され、全体として穏やかな雰囲気の中で曲を閉じます。

第2曲：Scherzo: Allegro leggiero
イ短調、6/8拍子の軽快なスケルツォです。メンデルスゾーンが弦楽四重奏という編成をいかに巧みに扱ったかを示す一例と言えます。活気に満ちた主題で開始し、16分音符の流れるようなパッセージが各楽器間で受け渡されながら進行します。中間部ではハ長調の新しい主題が登場し、簡潔な締めくくり風の楽句に続いて冒頭の主題が再現されます。ハ長調の主題も今度はイ長調で再び現れます。コーダでは勢いと音量を落とし、最後にピッツィカートで静かに締めくくられます。

第3曲：Capriccio: Andante con moto - Allegro fugato, assai vivace
ホ短調で、2つの部分から構成されます。前半は12/8拍子、アンダンテ・コン・モートで、情熱的な抒情が歌われます。伴奏の上に第1ヴァイオリンが表情豊かな旋律を奏でます。前半部が第1ヴァイオリンの小規模なカデンツァで区切られると、4/4拍子、アレグロ・フガート・アッサイ・ヴィヴァーチェの活気あふれるフガートによる後半部へと移ります。主題は第2ヴァイオリンから始まり、チェロ、ヴィオラ、第1ヴァイオリンへと次々に応答していきます。このフガートは勢いを保ったまま最後まで進み、強奏によって堂々と曲を終えます。

第4曲：Fuga: A tempo ordinario
変ホ長調、4/4拍子のフーガです。創意工夫に富んだ構成でありながら、全体としては穏やかな雰囲気に包まれています。主題はヴィオラによって提示され、続いて第2ヴァイオリン、第1ヴァイオリン、チェロへと順に応答していきます。一度区切りがつけられた後、異なる新しい主題を用いた別のフーガが開始されます。やがて音量を抑えた中で、最初の主題と新しい主題が同時に組み合わされて奏でられます。最後は長いディミヌエンド（だんだん弱く）がかかり、静かな響きの中で曲が閉じられます。

この作品集は、メンデルスゾーンの作曲活動における様々な時期のスタイルや技法を垣間見ることができる貴重な一冊と言えます。

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