弦楽四重奏曲第11番 (シューベルト)

シューベルト：弦楽四重奏曲第11番 ホ長調 D 353

フランツ・シューベルトによる弦楽四重奏曲第11番 ホ長調 作品125-2, D 353は、その作曲年について、かつては1817年と見なされていましたが、近年の研究では1816年に書かれたとする説が有力視されています。この作品は、作曲者がそれまで手がけていた家庭での演奏を主な目的とした作品群から一歩進み、より専門的な演奏家によるアンサンブルを念頭に置いて作曲されたと考えられています。その精緻な構成からは、「家庭用音楽」の域を脱した新たな境地がうかがえます。

本作を完成させた後、シューベルトは弦楽四重奏曲の作曲からしばらく離れることになります。次にこの分野で主要な作品、例えば有名な『弦楽四重奏曲第12番 ハ短調《四重奏断章》』（D 703）を生み出すのは、1820年になってからのことです。

この弦楽四重奏曲の初演は、作曲年と同じ1816年に、非公開の演奏会で行われたと考えられています。出版は作曲者シューベルトの没後、かなり後の1840年まで待たなければなりませんでした。出版に際しては、本作は別の作品である『弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調』（D 87）とともに、まとめて「作品125」として世に出されました。興味深いことに、この第10番は実際には本作よりも前に、1813年に書かれた作品です。出版時に何らかの事情があったためか、本来の作曲順とは異なる通し番号が与えられてしまいましたが、これが旧来のシューベルト作品全集にも引き継がれる結果となりました。

作品の自筆譜に関しては、現在の所在は不明となっています。しかし、かつては音楽出版者として知られるアントン・ディアベリが所有していたという記録が残されています。

曲の構成

本作は全4楽章で構成されており、全曲を通しての演奏時間はおよそ23分です。

第1楽章：アレグロ・コン・フォーコ
ホ長調、4分の4拍子によるソナタ形式。力強く情熱的な開始を特徴とします。展開部を経て再現部に至る部分では、モーツァルトの有名な『交響曲第40番 ト短調』との素材的な関連性が指摘されています。

第2楽章：アンダンテ
イ長調、4分の2拍子。変奏曲に近い書法が用いられていますが、全体としてはロンド形式のような性格も持ち合わせています。この楽章では、各部分の明確な転調を調号の変更によって示しているのが特徴です。

第3楽章：メヌエット：アレグロ・ヴィヴァーチェ - トリオ
ホ長調から中間部のトリオでハ長調に転じ、再びホ長調に戻る複合三部形式。速いテンポのメヌエット主部と、対照的なトリオ部分からなります。

第4楽章：ロンド：アレグロ・ヴィヴァーチェ
ホ長調、4分の2拍子。楽譜には「ロンド」と記されていますが、実際には伝統的なロンド形式の枠にとらわれず、より自由な楽想で展開されるフィナーレです。

この作品は、初期のシューベルトが弦楽四重奏という形式で、より高度な音楽表現へと歩みを進めた一例として位置づけられます。

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