弦楽四重奏曲第4番 (メンデルスゾーン)
フェリックス・メンデルスゾーンによる弦楽四重奏曲第4番 ホ短調 作品44-2は、彼の創作活動における重要な位置を占める作品です。1837年に作曲され、その後1839年に改訂が施されました。
メンデルスゾーンはごく若い頃から室内楽に親しみ、弦楽器の扱いに非凡な才能を示していました。彼の書法は自然でありながらも効果的で、洗練された響きを生み出します。この弦楽四重奏曲第4番もまた、そうしたメンデルスゾーンの熟達した筆致が存分に発揮された作品であり、同時代のシューベルトやドヴォルザークの弦楽四重奏曲に見られるようなぎこちなさはなく、弦楽四重奏という形式にふさわしい、有機的で流麗な音楽が展開されます。
室内楽の分野から一時遠ざかっていたメンデルスゾーンが再び本格的にこのジャンルに着手したのは1837年初頭のことでした。本作はその皮切りとして、同年6月18日にまず完成を見ます。その後、メンデルスゾーンは作曲家のフェルディナント・ヒラーに、特に第4楽章に対して大幅な改訂を加えたことを報告しています。本作に続いて、1838年には第5番、そして第3番が作曲され、これら3曲がまとめて作品44として出版されました。作品44以前に書かれた初期の弦楽四重奏曲（第1番、第2番）では、ベートーヴェンの後期作品からの影響や、それらの研究の成果が顕著でしたが、作品44の諸作からは、メンデルスゾーン独自の音楽語法が円熟味を増し、確立されていく様子を明確に見て取ることができます。
この作品の初演は、作曲と同年の1837年10月29日にライプツィヒで行われ、特に第2楽章がアンコールされるなど、大きな成功を収めました。楽譜は、パート譜が1839年6月に、総譜が翌1840年11月に出版されています。作品44としてまとめられた3曲は、スウェーデンの廃太子であったヴァーサ公グスタフに献呈されました。
演奏時間は約28分から30分程度です。本作はメンデルスゾーンの他の弦楽四重奏曲と同様、4つの楽章から構成されています。
第1楽章：アレグロ・アッサイ・アッパショナート 4/4拍子 ホ短調。ソナタ形式。
情熱的な性格を持つこの楽章は、同じホ短調で書かれた後年のヴァイオリン協奏曲を予感させる要素を含んでいます。冒頭、シンコペーションを伴う音型に乗って第1ヴァイオリンが朗々と歌い上げる情熱的な第1主題が現れます。次第に音価を細かくしていき、絶え間ない16分音符による激しい経過句へと続きます。この16分音符の動きは、以降この楽章全体の主要なモチーフとなります。一度静まると、ト長調でなだらかな第2主題が提示されます。第2主題は先ほどの16分音符の動きにかき消されるように終わり、長調化された第1主題が現れて静かに提示部を閉じます。展開部も第1主題から始まりますが、やがて経過句のモチーフが登場し、各楽器間で対位法的に展開されて大きな盛り上がりを築きます。再現部では、第1主題の伴奏が分散和音に変更されており、第2主題はホ長調で再現されます。経過句のモチーフが再び現れて再現部が終わりを告げると、コーダへと移行します。第1主題に始まり、経過句のモチーフで圧倒的なクライマックスを形成した後、急に勢いを失い、第2主題が回想されます。そこから第1主題の断片を用いて徐々にクレッシェンドし、強奏で楽章を締めくくります。
第2楽章：スケルツォ：アレグロ・ディ・モルト 3/4拍子 ホ長調。自由な三部形式。
この楽章は、高速な16分音符のトレモロとスタッカートが特徴的な、極めて軽快な主題に基づいています。その雰囲気はメンデルスゾーンの代表作の一つである『夏の夜の夢』序曲を聴く者に想起させるほどです。16分音符の連打は伴奏にも用いられ、独特の効果を生み出しています。主題に基づき対位法的に音楽が進められますが、ごく短い中間部では、チェロのピッツィカートに乗ってヴィオラが嬰ヘ短調の愛らしい旋律を奏でます。この中間部はわずか10小節ほどで終わり、再び軽快な主部が戻ります。楽章の終わり近くで再び中間部の旋律が回想され、弱音で閉じられます。
第3楽章：アンダンテ 4/4拍子 ト長調。三部形式。
メンデルスゾーンの有名なピアノ曲集「無言歌」を思わせるような、抒情的で美しい楽章です。たゆたうような、あるいは流れ続ける16分音符による充実した伴奏に乗って、歌謡的で豊かな旋律が奏でられます。この旋律は、第1楽章の主題から派生したものと言われています。メンデルスゾーンはこの楽章の演奏に際し、「この楽章を重たく演奏してはならない」との指示を書き加えています。16分音符の伴奏は楽章を通して絶え間なく続きますが、中間部ではそれが一瞬止み、別の愛らしい旋律が現れます。その後主部の旋律が回帰しますが、今度はチェロによって奏されます。再び愛らしい中間部の旋律が回想される際に伴奏が止まりますが、まもなく再開し、流れに乗って静かに、最弱音で楽章を終えます。
第4楽章：プレスト・アジタート 3/4拍子 ホ短調。
この楽章の形式については、ソナタ形式であるとする分析が一般的ですが、ロンド形式の要素も含まれる可能性が指摘されています。楽章は、情熱的で激しい第1主題の提示によって開始されます。この主題もまた、第1楽章の主題と関連性を持っています。続いてト長調で現れる第2主題は、第1主題とは対照的に、穏やかで歌謡的な性格を持っています。その後、音楽はアニマートとなり活発に進みます。途中、第1主題が主調で再現された後も、第2主題を織り交ぜながら、対位法的な書法を駆使して精力的に展開されます。再現部では第2主題がホ長調で再現され、その後、第1主題などを用いた活発なコーダへと続きます。最後にフォルテッシモによる堂々とした響きで全曲を締めくくります。
メンデルスゾーンはごく若い頃から室内楽に親しみ、弦楽器の扱いに非凡な才能を示していました。彼の書法は自然でありながらも効果的で、洗練された響きを生み出します。この弦楽四重奏曲第4番もまた、そうしたメンデルスゾーンの熟達した筆致が存分に発揮された作品であり、同時代のシューベルトやドヴォルザークの弦楽四重奏曲に見られるようなぎこちなさはなく、弦楽四重奏という形式にふさわしい、有機的で流麗な音楽が展開されます。
室内楽の分野から一時遠ざかっていたメンデルスゾーンが再び本格的にこのジャンルに着手したのは1837年初頭のことでした。本作はその皮切りとして、同年6月18日にまず完成を見ます。その後、メンデルスゾーンは作曲家のフェルディナント・ヒラーに、特に第4楽章に対して大幅な改訂を加えたことを報告しています。本作に続いて、1838年には第5番、そして第3番が作曲され、これら3曲がまとめて作品44として出版されました。作品44以前に書かれた初期の弦楽四重奏曲（第1番、第2番）では、ベートーヴェンの後期作品からの影響や、それらの研究の成果が顕著でしたが、作品44の諸作からは、メンデルスゾーン独自の音楽語法が円熟味を増し、確立されていく様子を明確に見て取ることができます。
この作品の初演は、作曲と同年の1837年10月29日にライプツィヒで行われ、特に第2楽章がアンコールされるなど、大きな成功を収めました。楽譜は、パート譜が1839年6月に、総譜が翌1840年11月に出版されています。作品44としてまとめられた3曲は、スウェーデンの廃太子であったヴァーサ公グスタフに献呈されました。
演奏時間は約28分から30分程度です。本作はメンデルスゾーンの他の弦楽四重奏曲と同様、4つの楽章から構成されています。
第1楽章：アレグロ・アッサイ・アッパショナート 4/4拍子 ホ短調。ソナタ形式。
情熱的な性格を持つこの楽章は、同じホ短調で書かれた後年のヴァイオリン協奏曲を予感させる要素を含んでいます。冒頭、シンコペーションを伴う音型に乗って第1ヴァイオリンが朗々と歌い上げる情熱的な第1主題が現れます。次第に音価を細かくしていき、絶え間ない16分音符による激しい経過句へと続きます。この16分音符の動きは、以降この楽章全体の主要なモチーフとなります。一度静まると、ト長調でなだらかな第2主題が提示されます。第2主題は先ほどの16分音符の動きにかき消されるように終わり、長調化された第1主題が現れて静かに提示部を閉じます。展開部も第1主題から始まりますが、やがて経過句のモチーフが登場し、各楽器間で対位法的に展開されて大きな盛り上がりを築きます。再現部では、第1主題の伴奏が分散和音に変更されており、第2主題はホ長調で再現されます。経過句のモチーフが再び現れて再現部が終わりを告げると、コーダへと移行します。第1主題に始まり、経過句のモチーフで圧倒的なクライマックスを形成した後、急に勢いを失い、第2主題が回想されます。そこから第1主題の断片を用いて徐々にクレッシェンドし、強奏で楽章を締めくくります。
第2楽章：スケルツォ：アレグロ・ディ・モルト 3/4拍子 ホ長調。自由な三部形式。
この楽章は、高速な16分音符のトレモロとスタッカートが特徴的な、極めて軽快な主題に基づいています。その雰囲気はメンデルスゾーンの代表作の一つである『夏の夜の夢』序曲を聴く者に想起させるほどです。16分音符の連打は伴奏にも用いられ、独特の効果を生み出しています。主題に基づき対位法的に音楽が進められますが、ごく短い中間部では、チェロのピッツィカートに乗ってヴィオラが嬰ヘ短調の愛らしい旋律を奏でます。この中間部はわずか10小節ほどで終わり、再び軽快な主部が戻ります。楽章の終わり近くで再び中間部の旋律が回想され、弱音で閉じられます。
第3楽章：アンダンテ 4/4拍子 ト長調。三部形式。
メンデルスゾーンの有名なピアノ曲集「無言歌」を思わせるような、抒情的で美しい楽章です。たゆたうような、あるいは流れ続ける16分音符による充実した伴奏に乗って、歌謡的で豊かな旋律が奏でられます。この旋律は、第1楽章の主題から派生したものと言われています。メンデルスゾーンはこの楽章の演奏に際し、「この楽章を重たく演奏してはならない」との指示を書き加えています。16分音符の伴奏は楽章を通して絶え間なく続きますが、中間部ではそれが一瞬止み、別の愛らしい旋律が現れます。その後主部の旋律が回帰しますが、今度はチェロによって奏されます。再び愛らしい中間部の旋律が回想される際に伴奏が止まりますが、まもなく再開し、流れに乗って静かに、最弱音で楽章を終えます。
第4楽章：プレスト・アジタート 3/4拍子 ホ短調。
この楽章の形式については、ソナタ形式であるとする分析が一般的ですが、ロンド形式の要素も含まれる可能性が指摘されています。楽章は、情熱的で激しい第1主題の提示によって開始されます。この主題もまた、第1楽章の主題と関連性を持っています。続いてト長調で現れる第2主題は、第1主題とは対照的に、穏やかで歌謡的な性格を持っています。その後、音楽はアニマートとなり活発に進みます。途中、第1主題が主調で再現された後も、第2主題を織り交ぜながら、対位法的な書法を駆使して精力的に展開されます。再現部では第2主題がホ長調で再現され、その後、第1主題などを用いた活発なコーダへと続きます。最後にフォルテッシモによる堂々とした響きで全曲を締めくくります。
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