張国紀

張国紀（ちょう こっき）

張国紀は、明王朝末期に生きた官僚であり、天啓帝の皇后である張氏の父親として知られています。彼の人生は、明朝末期の激動する政治情勢に翻弄され、栄光と転落、そして悲劇的な結末を迎えることとなりました。

生い立ちと官界入り

張国紀は、河南省祥符県の出身で、監生という官僚予備軍のような立場にありました。彼の人生が大きく変わったのは、娘の張氏が天啓帝の皇后に選ばれた時です。天啓元年（1621年）4月、娘が皇后となったことで、彼は一躍、正一品という非常に高い位の錦衣衛左都督に任じられました。これは、日本の大名にあたる役職で、かなりの権力と富を得たことになります。

偽の親騒動と苦難

しかし、幸運は長くは続きませんでした。皇后の婚礼直後、孫二という死刑囚が、皇后の実の父親だと偽って名乗り出る事件が発生したのです。張国紀はこの偽の父親の出現に激怒し、天啓帝に訴えました。その結果、孫二は処刑され事件は解決したかに見えました。しかし、この事件は後々まで尾を引き、権力闘争が激化する中で、皇后が「丹山之穴、藍田之種」（実父の子ではない）という根も葉もない噂を立てられ、張国紀自身も民衆を虐げたとして多くの弾劾を受け、死刑囚となってしまいます。この時、大学士の李国𣚴が同情し、助命嘆願を行ったことで、死罪は免れ、庶民に落とされて故郷に追放されることになりました。

復職と侯爵への道

その後、崇禎帝が即位すると、事態は好転します。張氏は皇嫂（皇帝の兄嫁）として懿安皇后と称えられ、張国紀も復職を果たしました。さらに、崇禎3年（1630年）には、崇禎帝の長男である朱慈烺が皇太子に封じられた際、皇太子の母方の祖父である周奎が嘉定伯に、張国紀は太康伯に任じられ、再び高位の爵位を得ることとなりました。この頃の張国紀は、人柄が温厚で気立てが良いと評判であったと伝えられています。

悲劇的な最期

しかし、明王朝の滅亡はすぐそこまで迫っていました。崇禎17年（1644年）2月、張国紀は2万両という大金を義捐金として崇禎帝に献上し、侯爵に任じられます。しかし、そのわずか1ヶ月後の3月、李自成率いる大順政権が都に侵攻。張国紀は息子と共に捕らえられ、財産を没収された上、過酷な拷問の末に処刑されてしまいます。また、妻の陳氏も自ら命を絶ったとされています。

張国紀の死後、弟の張国棟と張国祚は、残された不動産を全て清朝政府に献上し、明王朝の終焉を象徴する出来事となりました。

伝記資料

張国紀に関する主な伝記資料は以下の通りです。

『明熹宗実録』
『崇禎長編』
『甲申伝信録』
『清世祖実録』

これらの資料は、張国紀の生涯や明末の動乱について知る上で貴重な情報源となっています。

張国紀の人生は、明王朝の盛衰と密接に結びついており、その栄光と悲劇は、歴史の大きな流れの中で翻弄された一人の官僚の姿を私たちに伝えています。

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