張形

張形：歴史と文化、そして現代

はじめに

「張形（はりがた）」とは、勃起した男性器を模した性具です。現代では「ディルド」や、形状から「コケシ」と呼ばれることもあります。電動モーター内蔵で振動するものは「バイブレーター」または「電動コケシ」と呼ばれます。この記事では、張形の長い歴史、多様な用途、材質や形状、そして日本における独特の文化的位置づけについて解説します。


歴史：起源から現代まで

張形の起源は定かではありませんが、紀元前には既に、権力者の衰えた勃起能力の代用品として使用されていた可能性があります。石器時代には、石棒が同様の用途で使用されていたという説も存在します。また、処女の初夜における出血を避けるために使用されたという説もあります。いずれにせよ、非常に古い歴史を持つ性具であることは間違いありません。


用途：多様な役割

張形の主な用途は、自慰行為や性行為です。女性が自慰に使用したり、男性が女性との性行為で使用したり、男性が単独で自慰に使用したりと、その用途は多岐に渡ります。

歴史的には、以下のような用途も確認できます。

男性の性機能の代用: 勃起力の衰えを補うため、または性的な技巧として女性に使用されました。勃起機能は男性のアイデンティティと深く関わっているため、世界各地で様々な時代において、同様の物品が存在しました。
女性の自慰道具: 古くから女性が自慰の道具として使用しており、江戸時代には大奥でも使用されていたと伝えられています。
* 性交の予備段階または性的通過儀礼: 処女膜の裂傷による出血を避けるため、処女が初めて性交する前に張形を挿入する習慣がありました。これは、中世ヨーロッパの一部地域でも見られる習慣です。初夜権のような風習とも関連している可能性があります。


材質と形状：多様なバリエーション

張形の材質は、シリコーンなどの軟質合成樹脂から、金属、ガラスまで多様です。形状も、大きさ、長さ、色など、多様なバリエーションがあります。陰茎を精巧に再現したものから、半透明、透明、幾何学的な形状、突起のあるもの、巨大なもの、動物の性器を模したものまで存在します。小型バイブレーターと電池を組み込んだ製品もあります。


日本における張形文化

日本における張形の最古の記録は、飛鳥時代に遣唐使が持ち帰った青銅製のものです。江戸時代には、木や陶器製の張形が一般的に販売されるようになり、浮世絵春画にも登場します。田中優子氏は、日本の張形文化において、女性が自ら選び、買い、使用する点が大きな特色であると指摘しています。大奥など男性禁制の場所でも使用されていた記録が残っています。江戸時代には、男色の文化も存在しており、女性用だけでなく男性が肛門に用いることもありました。

明治時代以降は、近代化政策の一環として取り締まりの対象となり、多くの性具が没収されました。しかし、性風俗店での使用を前提とした性具は、度重なる取り締まりにもかかわらず生き残りました。1948年の薬事法改正以降は、厚生大臣の認可が必要となり、多くの業者は張形に顔を彫り込み、「こけし」や「人形」として販売するようになりました。インターネットの発達により、海外製品の入手が容易になった現在では、顔のあるものは減り、「ジョークグッズ」として扱われることが多くなっています。


信仰の対象としての張形

日本では、男性器の形をした張形は、子孫繁栄を願うお守りとしても用いられてきました。現在でも、木製の巨大な男性器像が神社に祭られている場合があります。神奈川県のかなまら祭は、男根を模した神輿が練り歩く奇祭として有名です。これは性病の難を避ける祈願として、国内外から観光客を集めています。


安全性と法的側面

薬事法では、性具は避妊具などと同種の扱いとなり、所定の水準を満たす必要があります。そのため、外見が明らかに性具であっても、「ジョークグッズ」として販売される場合があります。「ジョークグッズ」として販売されている製品を性具として使用する場合には、自己責任であることを認識する必要があります。使用にあたっては、衛生面にも注意し、コンドームを使用するなど、感染症や擦過傷の対策を行うことが重要です。


結論

張形は、長い歴史を持つ性具であり、その用途、材質、形状は多様性に富んでいます。日本においては、独特の文化的な位置づけを持ち、信仰の対象としても認識されてきました。現代においても、様々な形で存在し続けています。その歴史と文化を理解することで、より深く張形という存在を理解することができるでしょう。

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