張清

張清：梁山泊を彩った石礫の名手

中国の古典小説『水滸伝』に登場する張清は、梁山泊を代表する英雄の一人です。天捷星の生まれ変わりとされる彼は、梁山泊の好漢の中でも第十六位の地位を占めていました。その名は「没羽箭」張清。これは、彼の得意技である石礫投げに由来します。まるで羽根のない矢のごとく、正確無比な石礫を敵に浴びせかけるその技は、多くの強敵を打ち破る武器となりました。

張清は、元々は東昌府兵馬都監という地位にありました。梁山泊軍が東昌府を攻め寄せた際、彼は副将の龔旺と丁得孫と共に、その圧倒的な石礫投げの腕前を披露します。徐寧、燕順、韓滔、宣贊、呼延灼、劉唐、楊志、朱仝、雷横、そして関勝といった、梁山泊を代表する数々の英雄たちを相手に互角以上に渡り合い、その名を広く知らしめました。しかし、最終的には梁山泊に捕らえられ、紆余曲折を経て、梁山泊の一員となります。

梁山泊に合流した張清は、騎兵軍八虎騎兼先鋒使という重要な役割を担い、数々の戦いでその勇猛さを発揮しました。童貫との戦いで先鋒として敵を牽制し、済州攻めでは敵将周信を石礫で討ち取ります。高俅との戦いでさえ、敵将丘岳を負傷させ、敵軍の戦意を挫くことに成功しました。

朝廷への帰順後も、張清の活躍は続きます。遼国との戦いでは、檀州攻めで阿里奇を討ち取るなど、その武勇は衰えるどころかますます増していました。しかし、玉田県攻めにおいて、天山勇の放った隠し矢を受け負傷。治療のため檀州に退くことを余儀なくされます。回復後、兀顔光との総決戦に参加。関勝、花栄と共に混天象陣を破り、兀顔光を討ち取るという大功を成し遂げました。

また、張清は、石礫投げの名手である敵の女将・瓊英と出会い、結ばれるという一面も持ち合わせていました。これは、田虎征伐の際に起こった出来事です。しかし、彼の生涯は、方臘征伐において悲劇的な幕切れを迎えます。董平と共に独松関を攻めた際、腕の負傷を負っていた張清は、逃げる董平を追う厲天閏を阻もうと槍を放ちますが、槍が松の木に突き刺さり抜けなくなってしまいます。その隙を突かれ、厲天閏に殺害されてしまったのです。

張清の石礫投げの技は、日本の時代劇『銭形平次捕物控』に登場する銭形平次の投げ銭技のモデルになったとも言われています。これは、張清の石礫投げが、いかに精密で、そして効果的な技であったかを物語っています。

このように、張清は、卓越した武芸と、数々の戦場での活躍、そして悲劇的な最期まで、まさに『水滸伝』を代表する魅力的な人物像として、読者の記憶に深く刻まれています。彼の生涯は、その時代における英雄像の一つの典型を示すものと言えるでしょう。

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