張温 (明)

張温（ちょう おん）

張温は、生年不詳ながら、元末から明初にかけて活躍した武将です。その生涯は、朱元璋が率いる明朝の成立と拡大に深く関わっており、数々の戦でその武勇を示しました。

生涯

張温は、朱元璋に従って長江を渡り、その軍功によって千戸という役職に任じられました。その後も功績を重ね、天策衛指揮僉事にまで昇進しました。明朝が成立した洪武帝の時代初期には、徐達による北伐に従軍し、河南の制圧や陝西の攻略、そして蘭州の攻略に大きく貢献しました。蘭州では、元の将軍ココ・テムルが徐達が南へ帰った隙を突き、甘粛から兵を率いて迫ってきました。この時、多くの将軍が城を固く守り救援を待つことを主張しましたが、張温は果敢にも一戦して敵の勢いを挫くことを提案しました。彼は自ら兵を率いて出撃し、元軍を一時的に後退させることに成功しました。その後、蘭州城は元軍によって幾重にも包囲されましたが、張温は兵を鼓舞し、城を固守しました。元軍はついに蘭州を攻め落とすことができず、撤退を余儀なくされました。この功績を洪武帝は「奇功」と讃え、張温は大都督府僉事に抜擢され、さらに陝西行都督府僉事を兼任することになりました。

洪武4年（1371年）には、参将として傅友徳に従い、夏の討伐に参加し、多くの戦功を挙げました。洪武11年（1378年）には、副将として王弼らと合流し、西羌討伐に参戦しました。これらの功績により、翌年には会寧侯に封じられました。洪武13年（1380年）には、洪武帝の命を受け、河南の軍務を監督する役割を担いました。洪武14年（1381年）には、傅友徳に従って雲南征討にも参加し、その武勇を発揮しました。洪武20年（1387年）の秋には、自ら軍を率いてナガチュの残党を討伐し、再び功績を挙げました。

しかし、その後の洪武26年（1393年）、張温は居室の器に身分を越えたものを使用していたことが罪に問われ、藍玉の獄に連座して処刑されてしまいました。彼の華々しい軍歴と悲劇的な最期は、歴史に深く刻まれることとなりました。

張温は、明朝初期の混乱期において、数々の戦でその武勇を発揮し、明朝の安定と拡大に大きく貢献した武将でした。その功績は非常に大きいものでしたが、晩年の悲劇的な最期は、彼の生涯をより一層印象的なものとしています。

参考文献

* 『明史』巻132 列伝第20

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