張迪 (元)

趙迪（ちょう てき、1183年 - 1252年）は、13世紀半ばのモンゴル帝国に仕えた漢人将軍の一人です。現在の河北省である真定府藁城県の出身です。

生い立ちと金朝での活躍

幼い頃に父親を亡くしましたが、騎射に優れていたため、金朝に仕え、義軍万戸という地位にまで昇りつめました。特に、誰も引けなかった強弓を引きこなすことができたため、その名を知られるようになりました。その後、真定尉、藁城尉、藁城丞といった役職を歴任しました。

モンゴル帝国への帰順と西征

チンギス・カンによる金朝侵攻が始まると、趙迪はモンゴル帝国に帰順しました。1222年（壬午）には、永安軍同知節度使事に任命されています。チンギス・カンの西征にも従軍し、他の将軍たちが略奪を行う中で、趙迪だけは軍律を厳しく守り、略奪行為を禁じたと伝えられています。

捕虜解放の逸話

真定一帯がモンゴル軍によって平定された際、千人を超える捕虜が出ました。趙迪は、これらの捕虜は自分のものだと主張し、他の将軍たちに手出しをさせませんでした。そして、他の将軍たちが去った後、捕虜たちに「自分はあなたたちを奴隷にするつもりはない」と告げ、彼らを解放しました。この慈悲深い行為に、人々は深く感動し、涙を流しながら去っていったと言われています。

晩年

1252年（壬子）、趙迪は70歳で亡くなりました。7人の息子がおり、そのうちの一人である趙椿齢は、真定路転運使という役職に就きました。

人物評価

趙迪は、モンゴル帝国の支配下において、漢人でありながらも重要な地位を占めた人物でした。武勇に優れていただけでなく、軍律を厳守し、民衆を思いやる慈悲深さを持っていたことが、彼の評価を高めた要因と言えるでしょう。特に、捕虜を解放したエピソードは、彼の人間性をよく表しています。

参考文献

井ノ崎隆興「蒙古朝治下における漢人世侯 : 河朔地区と山東地区の二つの型」『史林』37号、1954年
『元史』巻151列伝38趙迪伝

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