強盗騎士

強盗騎士とは

強盗騎士、英語ではRobber Knight、ドイツ語ではRaubritterと呼ばれる彼らは、主に中世ヨーロッパにおいて騎士の身分を保ちながら、強盗や盗賊行為に従事していた者たちです。この騎士としての位階を持つことが、通常の盗賊とは異なる特異な点であります。

フェーデによる合法化

強盗騎士は、自らの行動を正当化するために、フェーデという騎士同士の決闘制度を悪用しました。この制度は、相手に対する訴えや対立を決闘で解決するものであり、強盗騎士たちはこれを巧みに利用して、彼らの盗賊行為を合法化したのです。すなわち、彼らの行動は騎士道の一部とされ、周囲から一目置かれる存在として振る舞っていました。

戦時と平時の生活

多くの強盗騎士は戦時には傭兵として戦い、平時には強盗行為を行って生計を立てていました。このような生活スタイルは、安定した収入源を持たない貴族層にとって、十分に生活を成り立たせるための苦肉の策でもあったのです。強盗騎士の活動の影響を受けたのは交易商人たちで、彼らは強盗騎士の縄張りを通過することを避けるようになりました。この結果、ローマ街道を利用した商業活動は大きな打撃を受けました。

ラント平和令による取り締まり

中世ドイツでは、強盗騎士の横行を抑えるために、複数のラント平和令が発布されました。この平和令は強盗騎士を取り締まるための法的枠組みとなり、騎士同士の争いを制御することを目的としていました。最も古いラント平和令は、1103年に神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世によって発布されたもので、これが帝国全土に影響を及ぼしました。

次に、1235年には皇帝フリードリヒ2世が「マインツのラント平和令」を発布しました。この平和令は、従来のラテン語からドイツ語に切り替えられ、騎士道を尊重しつつも強盗行為を取り締まるという新しい試みでした。そして、1495年にはヴォルムス帝国議会で永続するラント平和令が制定され、帝国内においてあらゆるフェーデを否定することが決まりました。この動きに伴い、帝国最高法院が設置されることになり、強盗騎士たちは法的な後ろ盾を失って衰退していきました。

影響と衰退

強盗騎士の存在は、中世の社会において大きな影響を及ぼしました。彼らの行為は商業活動に悪影響を及ぼし、また騎士道の名に値しないものとされることも多かったのです。特に、商人たちは彼らの縄張りを避ける必要があったため、経済活動全体にも影響が出ました。しかし、法整備が進むにつれて、彼らの権力は徐々に剥奪され、最終的には歴史の舞台から姿を消していくことになります。

盗賊騎士の名士

強盗騎士の中でも有名な人物には、ルノー・ド・シャティヨン、ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン、ロベール1世（ブルゴーニュ公）などがいます。彼らの活動や伝説は、後の文学や伝承に多大な影響を与えました。

このように、強盗騎士は中世ヨーロッパの一面を象徴する存在であり、その行動は騎士道と盗賊行為の境界を曖昧にするものでした。

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