強迫性パーソナリティ障害

強迫性パーソナリティ障害（OCPD）

強迫性パーソナリティ障害（OCPD）は、過度な秩序、完璧主義、およびコントロールへの強い欲求を特徴とするパーソナリティ障害です。日常生活において、柔軟性、開放性、効率性を損ない、著しい苦痛や機能障害を引き起こす可能性があります。

定義

OCPDは、精神医学的な障害の一種であり、その症状は成人期早期までに現れることが一般的です。DSMやICDなどの診断基準に基づいて診断されます。

診断基準

DSM-IV-TR

DSM-IV-TRでは、OCPDは秩序や完璧主義への過度なこだわりによって、効率性や柔軟性が損なわれる状態と定義されています。具体的には、以下の基準が挙げられます。

1. 規則、手順、細部に過度に注意を払い、活動の全体像を見失う。
2. 完璧主義のために計画が完了せず、締め切りに間に合わない。
3. 仕事や生産性に没頭し、休暇や休息を疎かにする。
4. 道徳、倫理、価値観に関して非常に厳格で、自分や他人を批判的に評価する。
5. 使い古された、価値のない物を手放すことができない。
6. 他人に仕事を任せることを極端に嫌がる。
7. 倹約を過度に重視し、将来の災難に備えようとする。
8. 頑固で妥協を許さない。

これらの基準のうち、4つ以上を満たす場合にOCPDと診断されます。ただし、これらの特徴が成人期早期から現れており、薬物や他の精神疾患によるものではなく、臨床的に意味のある苦痛や機能障害を引き起こしている必要があります。

ICD-10

ICD-10では、OCPDはF60.5として分類されています。ICD-10も、他のパーソナリティ障害と同様に、パーソナリティ障害の全般的診断ガイドラインを満たすことを求めています。

鑑別診断

OCPDは、他の精神疾患やパーソナリティ障害と鑑別する必要があります。

強迫性障害（OCD）: OCDは、強迫観念や強迫行為が存在することでOCPDと区別されます。OCPDは、より広範な行動スタイルや価値観に関連するものです。ただし、両方の診断基準を満たす場合は、両方の診断が下されます。
アスペルガー症候群: アスペルガー症候群は、柔軟性の欠如や強迫観念、自己流のルール作りなど、OCPDと類似した症状を示すことがあります。鑑別には、症状が生まれつきのものであるか、他者の気持ちや場の空気を考慮できるか、特定の分野への極端なこだわりがないかなどを考慮します。研究によれば、成人アスペルガー症候群の約40%がOCPDの基準を満たすとされています。
自己愛性パーソナリティ障害: 自己愛性パーソナリティ障害も完璧主義的な傾向を示すことがありますが、OCPDの場合は完璧にできなかったときに内罰的になることが多いのに対し、自己愛性パーソナリティ障害の場合は完璧にこなせたと思い込む傾向があります。また、自己愛性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害では、自分自身に甘い傾向が見られます。

治療

OCPDの治療には、認知行動療法（CBT）が有効であることが示されています。CBTでは、行動の背後にあるスキーマの修正と再構成を目指します。例えば、「失敗しても良い」という考え方を受け入れられるようにします。また、心理教育を通じて、気分や行動が、出来事の捉え方や意味付けに影響されることを理解し、気分や行動の変化を支援します。さらに、「心配を続けると問題が解決される」という誤った信念を検証するために、行動実験を行い、「心配しなくても問題は解決される」という認識を促します。

不安を軽減するためのリラクゼーション法やマインドフルネスも、長期的な効果が期待できます。

参考文献

アメリカ精神医学会、(翻訳)高橋三郎・大野裕・染矢俊幸『DSM-IV-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』（新訂版）医学書院、2004年。

関連項目

パーソナリティ障害
強迫性障害
完璧主義
心理療法
* 防衛機制

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