当子内親王

当子内親王の生涯

概要

当子内親王（とうしないしんのう）は、平安時代初期に生きた三条天皇の第一皇女です。母は藤原済時の娘である皇后・娍子。彼女は兄弟に敦明親王や性信入道親王を持ち、伊勢の斎宮として知られています。彼女の生涯は波乱に富み、当時の政治的背景に翻弄されました。

内親王宣下と斎宮への編入

寛弘8年（1011年）、三条天皇が即位したことにより、当子内親王は内親王と宣下されます。そして長和元年（1012年）12月4日、わずか12歳で伊勢斎宮に選ばれることになります。翌年、初斎院に入るために準備が進められ、長和2年（1013年）には野宮に入るなど、彼女の地位は着実に確立されていきました。この時期、三条天皇は藤原道長との関係悪化や自身の眼病など、様々な危機に直面していました。

当子内親王は、父皇の皇位を守るべく、内親王が斎姫となることの重要性を訴える託宣を発したとされています。これは、彼女自身が家族の為に感じていた強い思いを示すものでした。

斎宮への道

長和3年（1014年）9月20日、14歳で伊勢に行く群行が行われました。この発遣の儀式では、天皇と斎宮の間に振り返ってはいけないという規則があったにもかかわらず、三条天皇は別れが惜しくて振り返ってしまったという逸話が残されています。また、彼女が伊勢に下向した際には、「伊勢神宮に異常が無いことから、治世は長続きするだろう」との言葉を添えて、希望を託しました。

退下と道雅との関係

長和5年（1016年）1月29日、三条天皇の譲位に伴い、当子内親王は16歳で斎宮を退き、9月には帰京します。帰京後、不幸にも彼女と藤原道雅との密通の噂が立ちます。この件に関して怒りを覚えた三条上皇は道雅に厳しい処分を下し、彼女を母・娍子のもとに引き取り、道雅との接触を断たせました。世間では「まだ斎宮を退いたばかりであり、当子内親王に同情する声が多かった」とされていますが、彼女はその悲しみから自らの生き方を変える決意をします。

出家とその後

寛仁元年（1017年）、当子内親王は出家し、彼女の人生は沈静化の道を歩み始めました。生まれて間もないかのように早すぎる生涯を閉じたのは、治安2年（1022年）のことでした。享年22歳という短い年数でした。

特に彼女が道雅との別れの後に贈った歌は後に『百人一首』に採られ、深い情緒として後世に残されています。このように、当子内親王は政治的な背景や個人の感情が交錯する中で、特異な人生を歩んだ人物でした。

参考文献

• - 倉本一宏『三条天皇―心にもあらでうき世に長らへば―』ミネルヴァ書房、2010年。
• - 角田文衛監修『平安時代史事典』角川書店、1994年。
• - 服藤早苗・西野悠紀子・伴瀬明美・菅原正子・久保貴子『歴史のなかの皇女たち』小学館、2002年。

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