当帰芍薬散

当帰芍薬散（とうきしゃくやくさん）

当帰芍薬散は、漢方医学において婦人科領域で広く用いられる代表的な処方の一つです。この処方は、もともと中国の古典医学書である『金匱要略』に記載されており、日本においても長年にわたり使用されています。

特徴

当帰芍薬散は、比較的体力がなく、疲れやすい、顔色が青白い、冷え性などの虚弱体質の方に適しています。特に女性に多く用いられ、ホルモンバランスの乱れからくる様々な症状に効果を発揮します。ただし、めまいや立ちくらみなど、症状によっては男女問わず用いられることもあります。

病院で医師が処方する医療用医薬品と、薬局やドラッグストアで購入できる一般用医薬品があります。

組成

当帰芍薬散は、以下の6つの生薬から構成されています。

当帰（とうき）: 血を補い、血行を促進する作用があります。
川芎（せんきゅう）: 血液の流れを改善し、痛みを和らげる効果があります。
芍薬（しゃくやく）: 鎮痛、鎮痙作用があり、筋肉の緊張を緩和します。
沢瀉（たくしゃ）: 利尿作用があり、体内の余分な水分を排出します。
茯苓（ぶくりょう）: 精神安定作用があり、不安や緊張を和らげます。
朮（じゅつ）: 胃腸の機能を高め、消化吸収を助けます。

効能・効果

当帰芍薬散は、以下の症状に効果があるとされています。

更年期障害
月経不順
生理痛
下腹部痛
不妊症
妊娠中の諸症状（むくみ、貧血など）
めまい
耳鳴り
冷え性
むくみ
頭痛
肩こり
動悸
貧血
倦怠感

これらの症状は、冷えや血行不良、水分代謝の異常などが原因となっていることが多く、当帰芍薬散はこれらの根本的な原因に働きかけ、症状を改善します。

服用上の注意

以下の点に注意して服用してください。

慎重投与: 腹部が充実し、腹壁に力がある方や、胃腸が弱い方は、慎重に投与する必要があります。
副作用: まれに、発疹、肝機能異常、食欲不振、胃部不快感、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの副作用が現れることがあります。これらの症状が現れた場合は、服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。

関連方剤

当帰芍薬散と関連する方剤として、以下のものがあります。

当帰芍薬加附子湯
桂枝茯苓丸
桃核承気湯

これらの処方は、当帰芍薬散と同様に婦人科系の疾患に用いられますが、体質や症状に合わせて使い分けられます。

当芍美人について

当帰芍薬散が合う女性のタイプを指す言葉として「当芍美人」という表現があります。これは、華奢で色白、虚弱体質の女性を指す言葉で、当帰芍薬散が特に効果を発揮しやすいタイプとされています。

その他

江戸時代の名医、華岡青洲は、当帰芍薬散に呉茱萸（ごしゅゆ）という生薬を加えることで、さらに効果を高めたとされています。

参考文献

伸和製薬｜当帰芍薬散(一般用医薬品)

関連項目

漢方方剤一覧

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