彗星 (列車)

寝台特急「彗星」：京阪神と九州を結んだ夜行列車の軌跡

1968年10月、新大阪～宮崎間を結ぶ寝台特急「彗星」が運行を開始しました。その後、運行区間は拡大し、最大5往復もの運行本数を誇る人気列車となりました。しかし、時代の流れとともに新幹線や航空機、そして低価格な夜行バスの台頭により、利用客数は徐々に減少していきました。

1989年には平均乗車率93％と高い数字を記録した「彗星」でしたが、1980年代以降は深刻な利用客減少に直面。2000年3月には、長崎行きの寝台特急「あかつき」と併結運転されるようになり、発着駅も新大阪から京都に変更されました。それでもなお、乗車率は低迷し、2004年には30％まで落ち込んでいました。そして、2005年9月、長い歴史に幕を閉じ、惜しまれつつも廃止されました。

列車名の由来

「彗星」という列車名は、天体の彗星に由来しています。夜行列車の名称に天体の名前を用いるという慣例に倣ったものです。「彗星」という列車名は、過去にも東海道本線で運行された夜行急行列車の名称として使用されていました。

末期の運行概況

廃止間際の「彗星」は、下り列車が33号、上り列車が34号の列車番号で運行されていました。停車駅は、京都、新大阪、大阪、三ノ宮、姫路、岡山、倉敷、福山、下関、門司、小倉、中津、宇佐、別府、大分、臼杵、津久見、佐伯、延岡、南延岡、日向市、高鍋、宮崎、南宮崎と、日豊本線沿線の主要都市を網羅していました。一部駅は、上下線で停車駅が異なっていました。また、別府～南宮崎間の下り列車、そして南宮崎～延岡間の上り列車では、立席特急券を購入することでB寝台を座席として利用することもできました。

使用車両

「彗星」に使用されていた客車は、JR西日本の京都総合運転所に所属する14系15形客車でした。季節によっては、B寝台車の減車が行われることもありました。牽引する電気機関車は、区間によって異なり、京都～下関間はEF66形、下関～大分間と門司～下関間はEF81形、大分～南宮崎間と南宮崎～門司間はED76形が使用されていました。「あかつき」と併結する以前は、下関以東ではEF65形が牽引していました。

担当乗務員

運転士は、それぞれの担当区間を担当していました。車掌はJR九州が担当し、京都～小倉間は門司車掌区、小倉～南宮崎間は大分車掌センターが担当していました。

京阪神と九州東部を結ぶ夜行列車の変遷

「彗星」以外にも、京阪神と九州東部を結ぶ夜行列車は数多く存在しました。「くにさき」、「日向」、「夕月」、「九州観光号」など、様々な列車が運行され、時代の変化とともにその姿を変えていきました。これらの列車は、観光客の増加や交通事情の変化、そして国鉄からJRへの分割民営化など、様々な要因によって運行形態や車両、そして路線などが変更されてきました。

特に1968年のダイヤ改正では、「ヨンサントオ」と呼ばれた大規模な改正が行われ、「彗星」の運行開始を契機に、それまで運行されていた複数の夜行列車が統合・廃止されました。その後も、山陽新幹線全線開業や、利用客の減少などを背景に、多くの夜行列車が廃止されていきました。

「彗星」の廃止によって、京阪神と日豊本線沿線を結ぶ寝台特急は消滅しました。「彗星」と併結運転されていた「あかつき」も、2008年に廃止され、京阪神と九州を結ぶ寝台列車の歴史に終止符が打たれました。これらの列車は、それぞれの時代を反映し、人々の生活や文化に深く関わってきたと言えるでしょう。

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