彫師

彫師について

彫師（ほりし）は、浮世絵版画の制作において不可欠な存在です。彼らは、主に多色摺り浮世絵や錦絵の制作過程で重要な役割を果たします。ここでは、彫師の具体的な作業過程やその技術について詳述します。

彫師の役割と作業過程

彫師の仕事は、絵師が描いた絵を版木に転写し、印刷の準備を整えることから始まります。第一段階として、絵師の描いた絵が版元のチェックを経て「改印」が捺され、その後、輪郭線の版下が彫師に渡されます。この版下は、輪郭線のみが描かれたもので、これを糊付けした版木に裏返しに貼ることで、完成した版画が鏡像にならないようにします。

その後、版木は日陰で干され、糊が固化する前に和紙の上部が剥がされて、線を見やすくします。この準備が整ったら、彫師は木版画の彫作業に入ります。彫師は木版画が凸版印刷であることを考慮し、顔料を残す部分だけを彫り残します。具体的には、輪郭線の両側を小刀で彫り込み、不要な部分は鑿で削っていきます。特に「毛割」や「毛彫り」と呼ばれる髪の毛の生え際などの細かい作業は彫師自身の裁量で行われます。

多色摺りに向けての準備

多色摺りを行う際には、紙がずれないようにするために「見当」という目印をつけます。見当は通常、手前の左右の端を矩形に、逆側の端を水平に彫り残し、これにより各色の版木が正確に重なるよう配置されます。完成した版木は「主版」と呼ばれ、これを使って「校合摺り」が行われます。校合摺りは、数枚の作品を摺ることで版木の正確性を確認する作業であり、通常は彫師が行います。

絵師は校合摺りを参考にしながら色の指定を行い、その指定に従い彫師が新たに色版を製作します。この時、色ごとに異なる版木を用いて彫りますが、狭い面積の色については、別の色と一緒に彫ることもあります。

最終段階と役割分担

全ての色版が完成すると、次の段階は摺師の役割となります。摺師は、彫師が作成した複数の版木を用い、最終的な浮世絵版画を完成させる作業に取り掛かります。このように、彫師は作品の初期段階での非常に重要な役割を果たしており、その技術と精密な作業が浮世絵版画の美しさを形作る要因であると言えます。

彫師の技術やその作業の流れを理解することで、浮世絵版画の美しさや制作過程への理解がさらに深まることでしょう。

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