彰徳路

彰徳路（しょうとくろ）

彰徳路は、中国の河南省安陽市にあたる地域にかつて存在した行政区画であり、主にモンゴル帝国および大元ウルスの時代に設置されました。この歴史的な地名は、フレグ王家によりイラン方面からの領地として与えられ、重要な経済基盤を形成していました。ここでは、彰徳路の設立からその後の歴史的な展開について詳しく述べます。

歴史的背景

彰徳路の源流は、唐代にさかのぼり、相州と呼ばれた地域の前身を持ちます。モンゴル帝国の第2代皇帝オゴデイ・カアンの治世である1232年には、衛州と輝州が管轄される彰徳総帥府が設置されました。その後、第4代皇帝モンケ・カアンの時代には、彼の弟フレグに「相之五県」という名称で、後の彰徳路が与えられました。この際、フレグは西アジア遠征に備えて秩序ある供給ラインを確保する必要があり、彰徳の授与はその一環と見られています。

1265年には彰徳総管府が設置され、所属する地域には懐州、孟州、衛州、輝州とともに安陽県、輔岩県、湯陰県、臨漳県、林慮県などが含まれました。しかし、その後2年の間にそれぞれの地域に新たな総管府が設置され、林慮県は林州に昇格されました。その結果、輔岩県が安陽県に編入されることで、彰徳路の基本的な形が整いました。

フレグ家と彰徳路

モンケ死後の混乱の中で、フレグはイラン方面において自立し、フレグ・ウルスを築きました。この過程で彰徳路はフレグ家の直接的な経済基盤としての価値を失いました。さらに、カイドゥの乱が起こると、彰徳路の収益を本国に輸送することすら困難となりましたが、クビライ・カーンの時代には、彰徳路は依然としてフレグ家の領地とされ続け、名目上の保護が保持されました。これにより、フレグ家は彰徳路の経済活動に関与し、会計監査のための人材を派遣しました。

14世紀における状況

14世紀初頭、カイドゥの死によってカイドゥ・ウルスが解体されると、モンゴル系の国家間での連携が復活しました。ユーラシアでの人的・物的な交流が拡大し、フレグ・ウルスの君主ガザン・カンが大元ウルスに使者を送ったという歴史的記録もあります。その際、モンケ・カアンの治世に設定された彰徳路の収益が14世紀初頭までフレグ家のもとで保持されていたことが、ペルシア語の文献によって明らかにされました。

管轄県の概要

彰徳路には、以下の地域が含まれていました。

• - 安陽県
• - 湯陰県
• - 臨漳県
• - 林州

これらの地域は、彰徳路の行政および経済の中心ともなり、モンゴル帝国の影響の中で重要な役割を果たしました。

参考文献

• - 松田孝一「フラグ家の東方領」『東洋史研究』第39号、1980年

彰徳路の歴史は、モンゴル帝国の広がりやその後のイランへの影響を考察する上でも興味深い事例と言えるでしょう。この地域に残された古文書や記録からは、当時の体制や経済活動について多くのことが明らかになっています。

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