後の先

後の先（ごのせん）

「後の先」とは、剣術における戦術・戦略の一つで、相手の動きを見てから対応することで、結果的に相手よりも先に攻撃を成功させることを指します。単なる「カウンター」や「返し技」とは一線を画す、より高度な概念を含んでいます。

概要

本来、「後の先」は、武道の思想における時間的な概念「先の先」「先の後」「後の先」「後の後」に分類されるものの一つです。

先の先: 相手が攻撃しようとする意図を察知し、相手が技を繰り出すよりも前に攻撃を仕掛けること。
先の後: 相手が技を繰り出した直後、まだ体勢が整っていない隙を突いて攻撃を仕掛けること。
後の先: 相手の攻撃を防御または回避し、その流れの中で、相手の体勢が崩れた瞬間に反撃すること。
後の後: 相手の攻撃を完全に受け止めてから、体勢を立て直し、反撃すること。

「後の先」は、「後から動いて、先手を取る」という概念であり、相手の出方を見てから対応するため、冷静な判断力と高度な技術が求められます。相撲を例にとれば、相手が先に立ち上がったにもかかわらず、自分の攻撃を先に当てる状況が「後の先」に該当します。

各武道における「後の先」

「後の先」の概念は、剣術だけでなく、様々な武道に応用されています。

剣道

相手が斬りかかってきた際に、その太刀筋を冷静に見極め、最小限の動きで回避すると同時に、相手の隙を突いて斬り返す技が「後の先」の典型例です。相手の体勢が崩れた瞬間を捉えるため、高度な技術と判断力が必要です。

柔道

柔道における「返し技」は、「後の先」の応用と捉えることができます。相手の技を完全に受け止めてから反撃するのではなく、相手の技の力を利用して、相手を崩し、投げる技です。

2004年発行の書籍『柔道技の見極めハンドブック』で「IJFの技名称」に挙げられた技のうち、返し技は足技では大外返、大内返、燕返（事実上の「小外返」）、内股すかし、跳腰返、払腰返、内股返、手技は小内返だとしています。講道館・技研究部は「基本的な態度」として「決まり技の名称は最後に決まった技とする」としています。その原則に則れば、例えば小内返の名称は浮落が適切であるが、同研究部で検討した結果『従来より「返し技」「裏技」「すかし技」と言われてきた技で、その名称が一般的に定着している技については「返」「すかし」を用いる』こととされ、これらの名称も登録されました。

相撲

相撲における「後の先」は、立ち合いの瞬間に見られます。相手が勢いよく突っ込んできたところを、冷静に受け止め、相手の力を利用して体勢を崩し、有利な体勢に持ち込むことが「後の先」の応用と言えます。

注意点

「後の先」は、単に相手の攻撃を待つだけでなく、積極的に相手の動きを誘い出し、有利な状況を作り出すことが重要です。そのためには、高度な技術、冷静な判断力、そして何よりも豊富な経験が必要となります。

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