後藤房之助

後藤 房之助（ごとう ふさのすけ）

後藤房之助は、1879年11月14日に宮城県栗原郡姫松村で生まれ、1924年7月31日に亡くなった政治家です。彼は「八甲田雪中行軍遭難事件」の生存者として広く知られています。この出来事は、彼の人生における重要な転機であり、地域社会への貢献にも繋がりました。

経歴

後藤房之助は小作の家に五男として誕生しました。しかし、運命は彼に厳しかった。1899年に陸軍に徴集され、1902年1月に歩兵第5連隊の伍長として八甲田雪中行軍に参加しました。彼の人生の一部は、この行軍の中での過酷な運命によって大きく変わることとなります。

行軍は1月23日にスタートしましたが、極寒の中で多くの兵士が凍死するという悲惨な結果に終わりました。後藤は難を逃れた数少ない生存者の1人です。行軍中には、総指揮官である神成文吉歩兵大尉と共に行動していましたが、神成大尉が倒れた後、彼は単独で行軍を続けました。

1月27日に青森県大滝平付近で救助隊に発見された後藤は、驚異的な強さを見せました。発見当初は仮死状態にあったとされていますが、その後、奇跡的に蘇生します。この事件で栗原郡出身者の中で彼だけが生存し、他の17名は全員が凍死してしまいました。宮城県全体では、48名中2名が生存し、後藤ともう一人が助かるという状態でした。

帰郷した後、後藤は結婚し子供をもうけました。彼は1906年には自らの銅像の除幕式に出席するなど、困難を乗り越えた日々を送りましたが、その陰には多くの痛みもあったことでしょう。事故の影響は彼の身体にも及びました。両手両足を切断しましたが、乗馬や飲酒を楽しむという生活を続けました。

後藤は村会議員として地方自治に参加し、地域の発展に寄与しました。このように公共の場での貢献が続いていた彼は、1924年に脳溢血により死去します。彼の墓は姫松にあり、その一部は運命の事故で生涯を終えた兵士たちが眠る幸畑陸軍墓地にも埋葬されています。

後藤房之助伍長の像

後藤房之助を記念した像は八甲田山の馬立場に高さ7メートルで設置されています。この銅像は、彼が発見された時の姿をモデルにしており、「後藤房之助伍長の像」または「雪中行軍遭難記念像」と呼ばれています。この場所は行軍の過程で一時的に宿営した地点であり、彼が発見された正確な場所ではありませんが、その偉大な行動を称える重要な記念碑です。

像の建立は、当時の陸軍大臣や参謀総長の呼びかけによって、全国の将校から集められた寄付金によるもので、靖国神社の大村像を制作した大熊氏廣による制作です。鋳造は東京砲兵工廠が担当し、1999年には青森市の有形文化財に指定されました。文化財としての正式名称は「歩兵第五連隊第二大隊遭難記念碑（八甲田山雪中行軍遭難後藤伍長銅像）」です。

後藤房之助にまつわるエピソード

後藤の家族の中にも、歴史の波に翻弄される者がいました。彼の息子の1人である後藤信一は、日本陸軍に召集され、インパール作戦に参加した後、2023年に109歳で他界しました。父である後藤房之助の勇気と足跡は、息子に引き継がれていったのかもしれません。

このように、後藤房之助の人生は多くの試練と栄光を経て、地域に深く根ざしたものとなりました。彼の名は今でも多くの人々に語り継がれ、八甲田山の記憶とともに存在し続けています。

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