後藤英一

後藤英一：日本の計算機科学のパイオニア

後藤英一（1931年1月26日 - 2005年6月12日）は、日本の物理学者・計算機科学者であり、東京大学名誉教授として知られています。彼の業績は、パラメトロンの発明をはじめ、数式処理、磁気モノポール研究など、多岐にわたります。

パラメトロンの発明とコンピュータ開発への貢献

1954年、東京大学大学院在学中にパラメトロンを発明。この磁気論理演算回路素子は、日本の初期のコンピュータ開発に大きな影響を与えました。パラメトロン計算機の研究開発を続ける傍ら、ゴトーペアと呼ばれる高速論理素子を開発するなど、コンピュータの高速化にも貢献しました。

その他の業績

ワイヤーメモリ: 1960年代後半にはワイヤーメモリを発明し、日立製作所のHITAC 8700に採用されました。
可変断面積電子ビーム露光法: 集積回路製造の高速化に貢献し、日本電子などで利用されました。
HLispとFlats: プログラミング言語LISP処理系にハッシングを持ち込み、高速検索機能を実現しました。
多項式乗算の高速アルゴリズム: 数式処理分野の発展に貢献しました。
磁気モノポール探索: ポール・ディラックの原論文に触発され、コンピュータ以外の分野でも研究を行いました。
高精度ブラウン管: 理化学研究所において、2重偏向方式の高精度ブラウン管の研究開発を行いました。
ヘリウム冷凍機: 超伝導コンピュータ実現のため、安価なヘリウム冷凍機の開発に尽力しました。

受賞歴とエピソード

これらの研究業績により、1989年に紫綬褒章を受章しました。しかし、後藤自身は「半導体製造のための貢献で紫綬褒章をもらったが、半導体のために仕事をした事なんてない（笑）」と語っています。

幼少期からラジオ製作に熱中し、フェライトの飽和現象を応用するなど、独創的な発想を持っていました。外国人研究者に「パラメトロンの後藤、ゴトーペアの後藤、磁気モノポールの後藤のどれか？」と尋ねられ、「そのすべてだ」と答えたエピソードは、彼の多才さを示すものとして知られています。

計算機科学への情熱とメッセージ

後藤英一は、日本のコンピュータ開発黎明期を支えた重要な人物です。彼の独創的な発想と、常に新しい技術に挑戦する姿勢は、多くの研究者に影響を与えました。後藤は、日本の技術者がオリジナリティはなくても「デベロップメント」していいものを安く売るのが得意であると評価し、それも大切なことだと述べています。

略歴

1950年 成蹊高等学校卒業
1953年 東京大学理学部物理学科卒業
1958年 東京大学大学院修了
1958年 東京大学理学部助手
1959年 東京大学理学部助教授
1962年 理学博士（東京大学）
1964年 情報処理学会理事
1968年 理化学研究所情報科学研究室主任研究員（非常勤）
1970年 東京大学理学部教授
1987年 東京大学大型計算機センター長
1991年 神奈川大学理学部教授、理化学研究所特別研究員（非常勤）

参考文献

『計算機屋かく戦えり』（1996年）
『日本人がコンピュータを作った!』アスキー新書（2010年）

外部リンク

* 情報処理学会 コンピュータ博物館 日本のコンピュータパイオニア 後藤英一

後藤英一の功績は、日本の情報技術の発展に不可欠であり、彼の精神は後世に受け継がれていくでしょう。

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