徐湛之

徐湛之（じょ たんし）

徐湛之（410年 - 453年）は、南朝宋の時代の文官であり、その生涯は当時の政治情勢に深く関わっています。字は孝源、小字は仙童。父は徐逵之、母は宋の武帝劉裕の長女である会稽公主劉興弟という、皇族に近い血筋でした。

生涯

徐湛之は幼くして父を亡くし、祖父である劉裕に養育されました。劉裕の五男である江夏王劉義恭らと共に劉裕の側で過ごし、永初3年（422年）には枝江県侯に封じられます。元嘉6年（429年）に太子洗馬に任じられて以降、南彭城郡太守、沛郡太守、侍中、奮威将軍、驃騎将軍など、数々の要職を歴任しました。

徐湛之は、当時権勢を誇っていた劉裕の四男・劉義康や、建国の功臣である劉湛と親交を深めます。しかし、劉湛が文帝の命により処刑されると、徐湛之も粛清の対象となりました。母である劉興弟が文帝に助命嘆願をした際、武帝が貧しい時代に着ていた衣服の切れ端を示し、「富貴になった途端に自分の家族までも手に掛けようとするのか」と訴えたことで、徐湛之は赦免されました。

元嘉22年（445年）、劉義康の側近である孔熙先や范曄らが文帝を廃し、劉義康を擁立しようと企てた際、徐湛之は当初この計画に賛同しましたが、後に朝廷へ密告しました。しかし、密告内容が不明確であったことや、徐湛之自身も計画に関与していたことが発覚し、官位を剥奪されます。喪が明けた後、再び官職に復帰し、広陵城内に多くの施設を建設し、文化人を招いて娯楽に耽りました。

元嘉27年（450年）、文帝が北魏討伐を計画すると、徐湛之はこれに賛同し、反対していた将軍の沈慶之を説得するよう命じられました。しかし、この北伐は大失敗に終わり、逆に南朝宋の都である建康の目前まで北魏軍の侵攻を許すという失態を招きました。

元嘉30年（453年）2月、文帝が皇太子の劉劭を廃する意向を固めたことを知った劉劭は、弟の劉濬と共に事変を起こします。その夜、文帝と談義していた徐湛之は、侵入してきた武装した劉劭の兵によって文帝と共に暗殺されました。享年44歳。劉劭を討伐した弟の劉駿（孝武帝）が皇帝に即位すると、徐湛之は名誉を回復され、忠烈公と諡られました。

徐湛之の生涯は、南朝宋の皇室内部の権力闘争や、北魏との関係など、当時の政治情勢に深く関わっていたことを示しています。

伝記資料

* 『宋書』巻71 列伝第31

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