徐稚

徐稚（じょ ち）について

徐稚（97年 - 168年）は、後漢の時代に活躍した隠士であり、彼の字は孺子、そして号は聘君です。彼は「南州高士」とも称され、豫章郡南昌県の出身です。徐稚は生涯を通じて、強い独立心を保ち、周囲の人々から深く尊敬されていました。

生涯の足跡

徐稚の家は物質的には裕福ではありませんでしたが、彼は農業に従事し、自らの手で生計を立てることを大切に思っていました。その姿勢から、彼は非常に恭敬で謙虚な人物とされ、周囲の尊敬を集めました。彼の優れた道徳心から、しばしば官職に招待されましたが、これには応じることがありませんでした。

特に豫章太守の陳蕃からの招待には一度応じたものの、それは彼の意向によるものではなく、礼をもって請うた結果に過ぎませんでした。その際、陳蕃は彼のためだけに特別に椅子を用意したとされています。徐稚が去った後、その椅子は片付けられたとのことです。桓帝からは太原太守に任命されるよう依頼されましたが、これについても応じませんでした。最終的に、彼は霊帝の初年に再び召喚される意図があったものの、亡くなるまで官職には就きませんでした。彼は享年72歳で、長い人生をのびのびと生きたと言えるでしょう。

逸話と評価

徐稚は他者に対して非常に思いやりのある人物でした。彼は亡くなった人には食料を背負って弔問し、鶏酒を供えて弔い、名前を告げずに去るという素晴らしい行いが知られています。特に、郭泰の母が亡くなった際には、彼は生芻一束を送っただけでなく、その行いを「生芻一束、其人玉の如し」と詩にたとえて表現しました。また、ある集まりで名士たちが集まった際に、徐稚が来たことが話題になり、茅容が彼の後を追った時、「大樹はまさに倒れようとしているのに、こまごまとした事に悩む必要はない」という答えを残して立ち去ったという逸話もあります。

徐稚の子、徐胤もまた孝行で知られ、隠居生活を選んで官職には就きませんでした。このように、徐稚の家族も彼の生き様を受け継いでいました。

彼は詩人王勃の『滕王閣序』でも言及されており、「人傑地霊、徐孺下陳蕃之榻」という言葉で称えられています。また、南昌の青山湖の近くには徐孺子の祠堂が建てられ、当地の文化的な象徴ともなっています。しかし、北宋時代になると、詩人黄庭堅が南昌を訪れた際にその祠は以前のような賑わいを失ってしまっていたという話が伝わっています。徐稚の生涯は、彼がいかに人々に敬愛されていたかを物語る、価値あるものでした。

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