徐胤

徐胤（じょ いん）

徐胤（生没年不詳）は、中国西晋時代の武将です。

生涯

泰始5年（269年）、徐胤は都督荊州諸軍事である羊祜（ようこ）の軍司（軍の監察役）に任じられ、荊州襄陽郡（じょうようぐん）に赴任しました。

羊祜は荊州において、その知略と農政の手腕を発揮していました。しかし、軍中では軽装で鎧を着用せず、護衛も少数しかつけないことがあり、漁や狩りに熱中して政務を疎かにすることもあったようです。ある夜、羊祜が外出を試みた際、徐胤は棨（けい：儀仗用の矛）を手に軍営の門に立ち塞がり、進言しました。「将軍は万里を統括する要職にありながら、軽々しく軍営を抜け出すべきではありません。将軍の身の安全は国家の安危に直結します。私が今日ここで死なない限り、この門を開けることはできません！」

これに対し、羊祜は自身の行動を改めて謝罪し、その後はみだりに出歩くことを控えるようになったと伝えられています。

泰始8年（272年）頃、徐胤は益州に転任し、楊欣（ようきん）の後任として、呉との国境地帯を守備する巴東監軍（はとうかんぐん）に任命されました。

同年9月、呉の西陵督（せいりょうとく）であった歩闡（ほせん）が晋に投降。これに対し、呉の陸抗（りくこう）が歩闡を攻撃すると、晋朝は車騎將軍（しゃきしょうぐん）の羊祜を江陵（こうりょう）へ、荊州刺史（けいしゅうしし）の楊肇（ようちょう）を西陵へ、そして巴東監軍の徐胤を建平郡（けんぺいぐん）へ侵攻させ、歩闡の救援を試みました。

しかし、陸抗は周到な対策を講じました。張咸（ちょうかん）に江陵城を、孫遵（そんじゅん）に公安（こうあん）を守備させ、自身は西陵で楊肇と対峙。東進してくる徐胤に対しては、水軍督（すいぐんとく）の留慮（りゅうりょ）と鎮西将軍（ちんせいしょうぐん）の朱琬（しゅえん）を差し向け、これを阻止しました。

同年12月、楊肇が陸抗に敗北すると、羊祜率いる他の晋軍もすべて撤退を余儀なくされました。徐胤の建平郡への侵攻も、陸抗の周到な策によって頓挫したのです。

徐胤の事績は、羊祜への諫言に見られるように、その忠義心と責任感の強さを物語っています。また、巴東監軍としての呉との国境守備、歩闡救援における建平郡への侵攻など、軍事面においても重要な役割を担っていたことがわかります。

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