徒単阿里出虎

徒単阿里出虎（とぜん ありしゅつこ）

徒単阿里出虎（生年不詳 - 1154年）は、金の時代の女真族の貴族であり、軍人でした。彼は熙宗の近身侍衛を務め、熙宗を殺害したとされる10人のうちの一人です。

生涯

徒単阿里出虎の父である抜改は、金の太祖阿骨打に従い、数々の功績を挙げました。その功績により、節度使などの要職を歴任し、建国の功臣として知られています。また、抜改は遼王宗幹と婚姻関係を結ぶなど、親密な関係を築いていました。

皇統9年（1149年）、宗幹の息子である海陵王は、熙宗の殺害を計画しました。海陵王は、自身の娘である完顔合女（後の栄国公主）と徒単阿里出虎の息子である朮斯剌を婚約させ、熙宗の護衛を務めていた徒単阿里出虎に内応を働きかけました。

普段から凶暴な性格であったとされる徒単阿里出虎は、海陵王の提案を快諾し、「話が遅すぎる。廃立は男の仕事、主上に天下を保つ力はなく、全ての人望は貴方に集まっている。この謀は我の意志だ」と述べたと伝えられています。

12月9日、徒単阿里出虎は大興国の手引きによって宮廷に侵入し、熙宗の寝室に押し入りました。大興国の策略により、素手で立ち向かわざるを得なかった熙宗に対し、徒単阿里出虎は最初に太刀を浴びせました。その後、熙宗は僕散思恭にも斬られ、最終的には海陵王によってとどめを刺され、壮絶な最期を遂げることとなりました。

海陵王が即位すると、徒単阿里出虎は右副点検に任命され、多大な財貨を与えられました。彼の息子である朮斯剌は、栄国公主の婿となり、昭毅大将軍駙馬都尉に任命されました。その後、太原尹などの要職を歴任しましたが、徒単阿里出虎は功績を立てたことに奢り、暴虐な振る舞いが目立つようになりました。

貞元2年（1154年）、占い師の高鼎が徒単阿里出虎の運勢を占いました。その際、王乞という人物が関与し、王乞が徒単阿里出虎には天命があると告げたため、彼は喜びました。しかし、王乞が高鼎を誣告したことから、高鼎は徒単阿里出虎と王乞の一件を持ち出しました。その結果、徒単阿里出虎は処刑され、王乞ならびに徒単阿里出虎の家族も死刑に処されました。ただし、息子の朮斯剌のみは、妻である栄国公主の取りなしにより死刑を免れました。しかし、海陵王の命により、自らの手で父である徒単阿里出虎の遺体を焼却し、その骨灰を水中に捨てるという悲劇に見舞われました。

伝記資料

* 『金史』巻132 列伝第70

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