阿骨打

金朝を築いた英雄、阿骨打（アクダ）

阿骨打（アクダ、完顔阿骨打とも）は、12世紀初頭に女真族を率いて金朝を建国した初代皇帝です。彼の生涯は、女真族の独立と発展を象徴するものであり、その軍事的な才能と政治手腕は、後の東アジアの歴史に大きな影響を与えました。

生い立ちと出自

阿骨打は、女真族の中でも有力な完顔部（ワンヤン部）の出身です。祖父は完顔部の族長である烏古廼（ウクナイ）、父は劾里鉢（ヘリンボ）であり、次男として生まれました。母は女真拿懶（ナラン）部の首長の娘、翼簡皇后です。彼は、1068年に生まれました。当時、女真族は遼の支配下にありましたが、阿骨打の家系は、その中でも有力な部族として勢力を拡大していました。

完顔部の勢力拡大と阿骨打の台頭

完顔部は、松花江の支流である按出虎水（アルチュフ川）流域に居住しており、遼から間接的な統治を受けていました。阿骨打の先祖は、遼から節度使の称号を与えられ、その宗主権下で勢力を拡大していました。父や叔父、兄を補佐する中で、阿骨打は優れた指導力を発揮し、完顔部の勢力拡大に貢献しました。23歳の時には、討伐戦に参加し、その後も多くの戦いを経験しました。

兄の烏雅束（ウヤス）の時代には、完顔部は生女真の統一をほぼ成し遂げました。1113年に烏雅束が死去すると、阿骨打が首長の地位を継承し、節度使となりました。彼は、女真の君長からなる勃極烈（ボギレ）制度を整備し、そのリーダーとして都勃極烈（トボギレ）を称しました。

遼への反旗と金朝の建国

当時、中国東北部を支配していた遼は、皇帝の贅沢な生活のために女真族への搾取を強めており、その横暴さに女真の人々は怒りを募らせていました。1114年、ついに阿骨打は遼に対して挙兵し、遼の拠点を次々と攻撃・占領しました。また、女真の旧慣に従い、軍事組織である猛安・謀克（ミンガン・ムクン）の制を整備し、女真人を軍事的に組織しました。

1115年、阿骨打は按出虎水の河畔で皇帝に即位し、国号を大金と定め、会寧を都としました。年号は「収国」と定められました。国号の「金」は、按出虎水から産出する砂金の交易によって女真族が栄えたことに由来するとされます。金朝は、遼に対する強い対抗心を持っていました。

遼との戦いと宋との関係

阿骨打率いる金軍は、遼の拠点である黄龍府を攻め落とし、遼の皇帝である天祚帝を破りました。1116年には、遼東地方を支配下に収め、遼の権威を失墜させました。その後、遼は金に講和を申し入れましたが、金はこれを拒否しました。

一方、遼に苦しめられてきた宋は、金の快進撃を知り、金朝に接近しました。1120年、宋と金は「海上の盟」と呼ばれる同盟を結び、遼を挟撃することになりました。しかし、この同盟は宋の身勝手な要求と裏切りによって、複雑な関係へと発展します。金は遼を破り、雲州を制圧しましたが、宋は約束を破り、燕京の攻略を金に要請。金は燕京を占領して宋に割譲しましたが、この過程で両国の不信感は増大しました。

女真文字の創成と晩年

『金史』によれば、阿骨打は女真語を表すための文字の創成を命じました。1119年、契丹文字や漢字を参考に、女真文字（「女真大字」）が完成しました。これは、女真族の文化的な独立を象徴する出来事でした。

1123年、阿骨打は遼の天祚帝を追撃中に病を発症し、56歳でこの世を去りました。彼の死後、弟の呉乞買（ウキマイ）が後を継ぎ、遼を滅ぼし、北宋を滅ぼして華北一帯を領有しました。金朝は、阿骨打の築いた基盤の上に、さらに発展を遂げることになります。

人物像と逸話

阿骨打は、身長が高く、雄々しい容貌を持つ偉丈夫だったと伝えられています。彼は寛大かつ厳格で、弓矢の名手でした。また、自ら率先して戦場に立ち、その勇猛果敢な姿は、女真族にとって理想的な君主でした。

遼の宴席で、阿骨打は他の部族長のように踊りを披露することを拒否したという逸話があります。これは、遼に対する彼の反抗心を象徴するエピソードとして語り継がれています。

補佐した主な大臣

阿骨打を補佐した大臣には、以下のような人物がいます。

呉乞買（ウキマイ）
撒改（サガイ）
斜也（シエ）
習不失
阿離合懣
蒲家奴
* 粘没喝（ネメガ）

関連系図

阿骨打の関連系図は、以下の通りです（詳細省略）。

まとめ

阿骨打は、女真族を率いて遼からの独立を成し遂げ、金朝を建国した偉大な英雄です。彼の軍事的な才能と政治手腕、そして文化的な業績は、東アジアの歴史に大きな足跡を残しました。彼の生涯は、独立と発展を目指す人々の模範として、今もなお語り継がれています。

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