得分

得分（とくぶん）とは

得分という言葉は一般的には自己の利益や分け前を意味しますが、歴史的文脈では特定の法制度や経済構造に関連する用語です。本記事では、得分が律令法および荘園公領制においてどのように使用されたかについて詳しく解説します。

律令法における得分

日本の古代律令法において、得分は相続人が享受する財産の取り分を指します。得分を受け取る権利を持つ者は「得分親」と呼ばれ、この権利を持つのは嫡母、継母、嫡子、庶子、さらには女子も含まれていました。律令法の規定の中で、男子の分家や財産分与は原則として禁止されていたため、父親や祖父の遺産相続は想定されていなかったのです。

当初、得分親の範囲は限られていましたが、次第に兄弟や伯叔も得分親として認められるようになりました。この法律に基づく相続の仕組みは、社会の中での家族の地位や権利を強く反映しており、当時の社会構造を理解する上で重要な要素です。

荘園公領制における得分

次に、荘園公領制における得分について説明します。この制度では、国衙や荘園領主、荘官、地頭などが、彼らの持つ権利に応じて獲得する経済的な権利や利益を得分と呼びます。国衙と荘園領主は荘園および公領からの年貢、官物、地子を荘官や地頭を通じて徴収していました。この権利を行使することによって、彼らは地域の経済的な利益を享受していたのです。

しかし、時代が進むにつれ、名主と呼ばれる小領主が荘園や公領内で独自に存在感を増し、加地子という新しい形態の得分を生み出しました。これにより、名主はその支配下にある農民から独自の収入を徴収することが可能となりました。

鎌倉時代に入ると、加地子の制度には新たな職勢が生じ、これが得分の体系に変化をもたらしました。室町時代に至ると、得分権の売買が活発に行われ、社会経済構造がより一層複雑化しました。このように、得分は単なる分け前ではなく、歴史の中での権利や経済的利益の重要な要素となっていたのです。

まとめ

得分は、人々の権利や義務、そして社会的な地位に深く根付いた概念であり、古代日本の税制や相続の仕組みを知るためのキーとなります。律令法や荘園公領制における得分の変遷は、当時の日本社会の構造や動向を理解する上で欠かせない要素です。

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