得撫郡

得撫郡の概要

得撫郡（うるっぷぐん）は、北海道の千島列島にあたる地域にあった郡であり、1940年には人口が46人、面積は約1,494km²に及んでいました。この地域は古くからアイヌや和人の活動が盛んで、特にラッコの毛皮は貴重な交易品として知られ、様々な歴史的出来事の舞台となりました。得撫郡の領有権に関しては、千島列島全体の領土問題が存在し、現在も複雑な経緯をたどっています。

地理

得撫郡の境界は1876年から2010年まで変わることがなく、いくつかの重要な水道や島々に囲まれています。最北部には北得撫水道が位置し、得撫島と択捉島の間には択捉水道があります。これらの水道は、地域間の交通や漁業においても重要な役割を果たしています。

得撫郡は、北端に最大水深2,200mの北得撫水道を擁し、千島列島の中でも特に深い地点とされており、歴史的にも重要な意味を持つ場所です。また、武魯頓島や知理保以島などの小島も点在しており、豊かな自然環境を有しています。

歴史

得撫郡の歴史はアイヌや和人の交流に密接に関連しています。近年の研究によると、ラッコの交易が古くから行われており、特に蝦夷管領が松前氏へ献上した記録が残っています。江戸時代に入ると、幕府により地図が作成され、39の島々が描かれました。幕府は、北方探検の一環として新たな領土の調査を行っており、様々な記録が残されています。

この地域は、外的な侵入に対しても敏感であり、ロシア人の活動も支配者同士の関係に影響を与えました。18世紀の後半、ロシアによる毛皮の採取はアイヌ民族の生活に直結しており、様々な衝突や取引が行われました。文化3年（1806年）には、ロシアの襲撃を免れた記録が残っており、この地域が持つ国際的な重要性を示しています。

政治的変遷

江戸時代後期から明治期にかけて、得撫郡は幾度となく領有権が移転し、最終的には樺太千島交換条約によって日本の領土となりました。しかし、以降も種々の行政変更や地域管理が続き、特に明治10年には千島アイヌの村落がロシア領に移住するという事態が起き、郡内は無人となった時期もありました。

日本の敗戦後、得撫郡はソ連の占領下に置かれ、以降の歴史は複雑さを増していきました。1952年にはサンフランシスコ講和条約により日本の領有権が放棄されましたが、ロシアは未だにこの地域を自国の領土として主張しています。これにより、現在でも日ロ間の領土問題は解決を見ていない状況が続いています。

現状

得撫郡は、2010年に旧制度が廃止されるまで法的に名称が残存していた地域であり、現在まで正式な定住者は存在しないとされています。この地域は特に動物保護の観点から、訪問や居住が制限されており、かつての住人たちが残した文化や歴史が残る場所として位置付けられています。なお、千島列島は亜寒帯南端にあたり、独特の生態系を保っています。

得撫郡の歴史は、交易、文化の交流、外的侵入、政治的な変遷を通じたアイヌ民族の生活様式や日本とロシア間の関係を示す事例として、今も語り継がれています。これらの歴史的出来事は、北海道の地域文化や民族の理解を深める上で重要な要素とされています。

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