御代参街道

御代参街道：近江国の歴史と信仰を繋ぐ道

御代参街道は、近江国（現在の滋賀県）を東西に横断する歴史の道です。東海道の土山宿（甲賀市）から中山道小幡宿（東近江市）まで、約36キロメートルにわたって延びています。別名、東海道脇街道、北国越安土道、伊勢道、市道などと呼ばれ、古くから交通の要衝として機能していました。

誕生と名称の由来

街道の整備は、寛永17年（1640年）、春日局が伊勢神宮から多賀大社へ参詣した際に始まったと伝えられています。江戸時代中期には、京の公卿たちが正月、五月、九月と年に3回、伊勢神宮と多賀大社への代参を派遣する習慣があり、この街道がその経路として利用されました。この代参の習慣から「御代参街道」という名称が生まれたと考えられています。ただし、江戸時代の文献に「御代参街道」という記述が確認できるのは慶応4年（1868年）の記述が最初であり、名称の定着は比較的遅い時期だったと考えられます。土山の道標には「右北国たが街道　ひの八まん道」と記されていることから、北国への最短ルートとしても重要な役割を果たしていたことが分かります。

信仰と庶民の道

「お伊勢参らばお多賀へおいやれ（参れ）、お伊勢お多賀の子でござる」という里諺にあるように、伊勢神宮と多賀大社は深く結びついており、多賀大社への参詣は盛んに行われていました。御代参街道は、公家だけでなく庶民にとっても重要な参詣路として利用され、信仰の道を象徴する存在でした。

街道と現代

かつての御代参街道は、現在では県道52号線、県道45号線、県道46号線、国道477号線、県道41号線などの道路、そして近江鉄道本線の一部としてその役割を受け継いでいます。ただし、近江鉄道本線は日野駅から南は笹尾峠を経由せず、甲賀市水口町方面へと向かっています。

沿線に見る歴史と文化

御代参街道沿線には、多くの歴史的建造物や文化的資源が残されています。重要文化財に指定されている寺院や神社の宝塔、多宝塔、本殿、境内社など、歴史の重みを感じさせる建造物が点在し、街道の賑わい、信仰の深さを物語っています。また、鎌掛谷ホンシャクナゲや鎌掛屏風岩といった天然記念物も存在し、自然の豊かな景観も魅力の一つとなっています。さらに、小幡人形など、地域独特の伝統工芸も受け継がれています。

御代参街道の構成

御代参街道の主な経由地は以下の通りです。

土山宿 (甲賀市)：街道の起点。東海道と接続する重要な宿場町でした。
笹尾峠：街道の難所。険しい山道が続いていました。
鎌掛宿 (日野町鎌掛)：峠を越えた後の休憩地。
石原宿 (日野町石原)：宿場町として栄えました。
岡本宿 (東近江市蒲生岡本町)：街道の中間地点。
八日市宿 (東近江市)：重要な宿場町。
* 小幡宿 (東近江市五個荘小幡町)：街道の終点。中山道と接続していました。

これらの宿場町は、往時の賑わいを偲ばせる歴史的建造物や史跡が残されており、現在も歴史と文化の息吹を感じることができます。

御代参街道は、単なる交通路ではなく、歴史、信仰、文化が凝縮された貴重な道です。街道の歴史と文化を学ぶことで、近江国の豊かな歴史と人々の暮らしを深く理解することができます。

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