御伽衆

御伽衆についての詳細

御伽衆（おとぎしゅうまたは御迦衆）は、室町時代後期から江戸時代初期にかけて、将軍や大名の御側に仕えた職業です。彼らは雑談に応じたり、自身の経験談や書物の講釈を通じて、主君に知識を提供する役割を担っていました。御伽衆は「御咄衆（おはなししゅう）」や「相伴衆（そうばんしゅう）」とも称され、また江戸時代には「談判衆（だんぱんしゅう）」や「安西衆（あんざいしゅう）」と呼ばれることもありました。

始まりと流行

御伽衆の存在が初めて記録されたのは、天文年間（1532年-1555年）の『大内氏実録』です。その後、この職業は武田氏、毛利氏、後北条氏、織田氏、徳川氏といった多くの戦国大名の間で広がりました。『甲陽軍鑑』によれば、武田信玄は12人の御伽衆を用いており、織田信長も同様に種村慮斎を召し抱えました。また、土屋検校のような盲人も話術を活かして複数の大名に仕えた事例がありますが、特に豊臣秀吉は非常に多くの御伽衆を抱えていたことで知られています。

御伽衆の役割

「御咄衆」という言葉は、話し相手としての役割を強調していますが、実際には御伽衆の中に御咄衆が含まれています。御伽衆は話術だけでなく、武辺や政談に関する豊富な知識や体験が求められ、多くの場合、歴史に精通した年配の浪人が起用されました。しかし、江戸時代に入ると、次第に若い少年もその役割に起用され、彼らは単なる遊び相手としての役割を果たすようになっていきました。

慶長年間（1596年 - 1615年）には、御伽衆の笑話をまとめた『戯言養気集（ぎげんようきしゅう）』が刊行され、彼らの講釈が広がった結果、江戸時代以降の講談や落語の源流となることがありました。このように御伽衆は、落語家の原型とも言える存在です。

豊臣秀吉の御伽衆

豊臣秀吉は自身が読み書きに不自由していたため、それを補う形で多くの御伽衆を取り集めました。『甫庵太閤記』によると、彼の御伽衆の人数は800人にも及んだとのことです。秀吉に仕えた主な御伽衆には、富田左近、大村由己、佐久間不干（正勝）などが名を連ねています。これらの御伽衆は、かつての戦国大名や旧守護家出身の者が多く含まれ、秀吉の地位の上昇を示す意図があったとされています。

また、秀吉の御伽衆には、物読みの儒僧や町人の茶人、太鼓の名手など、多様な文化人も参加していました。特に有名な御伽衆には、名門山名家の末裔である山名禅高や、軽口と狂歌に秀でた曽呂利新左衛門があります。これらの人物は、秀吉との逸話が豊富であり、当時の文化を象徴する存在となっています。

結論

御伽衆は、日本の歴史において重要な役割を果たした職業であり、その文化的影響は今日の講談や落語に繋がっています。これらの職人集団は、ただの話し相手ではなく、主君に知識を提供し、文化を伝える重要な役割を担っていました。その存在は、時代を超えて今なお我々に影響を与えているのです。

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