御厨規三

御厨 規三

御厨 規三（みくりや のりぞう）は、日本の官僚、政治家。1879年（明治12年）11月3日、佐賀県小城郡多久村（現在の多久市にあたる地域）に御厨利貞の子として生まれる。士族の家系に連なる。1941年（昭和16年）8月20日にこの世を去った。

学歴と官界への第一歩

旧制第五高等学校の大学予科第一部（法科）で学んだ後、1906年（明治39年）に東京帝国大学法科大学の独法科を卒業。法律の専門知識を習得し、官界への道を歩み始める。

卒業後、まず警視庁で警部として勤務する。その後、台湾総督府へと活躍の場を移し、様々な重要な役職を担った。

台湾総督府時代

台湾では、警視として治安維持に携わったほか、専売局の煙草課長として産業政策に関与する。さらに、地方行政の責任者として南投庁長を務め、地域の統治と開発を推進した。最終的には、高雄州の内務部長として、広範な行政実務を統括する立場に昇進する。台湾での勤務を通じて、警察行政から地方行政、産業振興に至るまで、幅広い行政経験を積んだ。

地方自治への転身

台湾でのキャリアを終えた後、本土に戻り地方自治の分野で手腕を発揮する。1922年（大正11年）、三重県津市の市長に選ばれ、1925年（大正14年）までその職を務めた。都市行政の運営に携わり、津市の発展に貢献したとみられる。

津市長退任の翌年には、東京市（現在の東京都）の社会局長に就任。1928年（昭和3年）までの期間、大都市における社会事業や福祉政策の推進に力を注いだ。貧困対策や児童福祉、労働問題など、社会的な課題への対応が求められる重要なポストであった。

再び市長として

1930年（昭和5年）には、長崎県佐世保市の市長に就任し、再び地方都市の首長を務めることとなる。1934年（昭和9年）までの任期中、軍港都市として発展していた佐世保の市政を担った。二度にわたる市長経験は、御厨の行政手腕を示すものであった。

政治への挑戦と晩年

市長職を退いた後、国政への進出を目指し、第19回および第20回の衆議院議員総選挙に立候補する。しかし、残念ながらいずれの選挙でも当選を果たすことは叶わなかった。

公職以外では、知的障害児の教育・福祉施設である滝乃川学園の常務理事を務めるなど、社会事業にも関心を寄せた。幅広い分野で活躍した御厨規三は、1941年（昭和16年）に61歳でその生涯を閉じた。

主な著作

行政官としての経験や専門知識を活かし、著述活動も行った。

『警察法要論』（1913年、清水書店）
『台湾の警察要論』（1915年、新高堂書店） - 石川忠一と共同で執筆

これらの著作は、当時の警察制度や台湾の統治について知る上で貴重な資料となっている。

御厨規三は、官僚として国の行政に携わり、二つの市の市長として地方自治を率い、社会事業にも関わるなど、多岐にわたる活動を展開した人物である。その経歴は、明治から昭和にかけての日本の社会や行政の変遷を知る一助となるであろう。

もう一度検索