御掟

御掟（おんおきて）とは

御掟は、1595年8月3日に太閤豊臣秀吉によって発布された法令であり、日本の戦国時代における国政の基本方針を示した重要な文書です。この法令は、全国の大名や一般の人々が従うべきことを規定し、特に大名同士の婚姻や同盟について厳しい制約を設けました。御掟は、内容が二つの部分に分かれており、5つの主要な掟と、さらに9つの追加の掟が含まれています。

背景

文禄4年7月、秀吉はその甥である豊臣秀次に対して、謀反の疑いをかけ、彼を高野山に蟄居させました。その後、秀次は切腹し、秀吉は彼の家族や親族に対しても厳しい処分を下しました。この事件は、大名間の婚姻関係からの連帯や謀反の計画が疑われたため、大名たちの動揺を鎮める必要がありました。そこで、秀吉は諸大名に対し、秀頼への忠誠を誓うように命じ、無許可の婚姻禁止や誓紙の禁止などの規定を定めました。

御掟の内容

御掟の5ヶ条

1. 結婚の禁止: 大名は秀吉の許可なしに結婚をしてはならない。
2. 誓紙の禁止: 大名や小名を問わず、誓紙を交わすことは禁止されている。これにより、同盟や謀反の協定を防止することを狙っています。
3. 喧嘩について: 喧嘩や口論の際には、自分を抑えた側に道理があるとされている。
4. 不誠実な申し立てへの対処: もし不誠実な申し立てがあった場合には、両者を呼び寄せ、事実を明らかにするべきだと定められています。
5. 乗物の使用制限: 特定の者にのみ輿の使用を許可し、若年者は騎馬に乗ることが求められています。

御掟追加の9ヶ条

1. 公家の奉公: 公家は所定の奉公を行うことが求められます。
2. 神職仏僧への訓示: 修学や修道に関する指導がなされます。
3. 年貢に関する規定: 年貢納入についての紛争解決策が提供されています。
4. 財産の制限: 大名でない者は土地や下人を制限され、また大名も妾の人数を制限されることが定められています。
5. 奉仕の義務: 知行分における奉仕の義務が明記されています。
6. 直訴の窓口: 直訴は年寄衆を通じて行うことが求められます。
7. 菊紋と桐紋の使用制限: 許可がない限り、これらの紋章の私的使用を禁止しています。
8. 酒の戒め: 酒に対する注意が促されています。
9. 覆面の禁止: 身分を偽ることを禁じる条項があります。

御掟の破棄と影響

しかし、1598年に秀吉が亡くなると、御掟は五大老や五奉行によって破られる結果となりました。合議制では権威が不足し、誓紙が頻繁に交わされるようになり、この制度は形骸化しました。特に徳川家康は、密かに婚約を結ぶなど、御掟を無視する行動に出てしまいます。これが豊臣家内部の内乱や関ヶ原の戦いの引き金となりました。

結論

御掟は、時代背景から見ても豊臣政権の重要な法令であったものの、その後の政権運営においては守られることなく破棄される運命にありました。また、家康は後に幕府を設立し、御掟の内容を取り入れた法令を発布し、武家の規律を守らせようとしました。御掟は、豊臣政権の法令として歴史に名を刻み、後の時代への影響を与えることとなったのです。

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