御清水

福井県大野市の貴重な水資源：御清水

福井県大野市泉町に湧き出る御清水は、1985年に名水百選、そして「名水と朝市のまち・越前おおの」として水の郷百選にも選ばれた、由緒ある名水です。大野盆地を流れる九頭竜川、真名川、清滝川、茜川の豊かな水系と、豪雪地帯特有の豊富な降水量によって育まれた地下水が、扇状地の末端で湧き出している数多くの清水の一つです。古くから地元住民はこれらの湧水を「清水」と呼び、生活用水として利用してきました。

御清水は、特にその歴史的背景において重要な意味を持っています。1573年、金森長近が越前大野城を築城し、城下町を整備した際、豊富で良質な水源として注目されたのが、市内南側に位置する本願清水でした。この湧水が城下町に導水され、生活用水として利用されたのです。御清水も、亀山の東麓にある湧水帯に位置し、城主に利用されたことから「御清水」や「殿様清水」と呼ばれるようになり、大切に保護されてきました。

江戸時代には、武家屋敷が立ち並び、家来たちが生活用水として御清水を利用していました。武家のしきたりに則り、上流から飲料水、冷却用水、野菜洗い場など、用途別に使用が定められていた様子は、現在も地域住民によって受け継がれています。御清水の地下水は、一年を通してほぼ15℃と安定した温度を保ち、その冷たさと清らかさは、近隣の平成の名水百選に選定された本願清水と同様に、地域の人々に親しまれてきました。本願清水では、天然記念物のイトヨが生息していることでも知られています。

しかし、1965年頃から御清水の地下水位が低下し、湧水量が減少する問題が発生しました。工業用水や融雪用として地下水を大量に汲み上げる事が原因の一つと考えられており、現在も対策が続けられていますが、問題は完全に解決されていません。

御清水へのアクセスは、JR越美北線越前大野駅から徒歩約20分、京福バス「イトヨの里会館口」下車、または国道158号もしくは国道157号を利用し、大野まちなか交流センター駐車場から徒歩5分と、比較的容易です。

御清水は、単なる湧水ではなく、大野市の歴史と文化、そして人々の生活に深く根付いた、かけがえのない資源です。その水質の保全と、豊かな自然環境の維持は、未来世代へと繋いでいく重要な課題となっています。名水百選、水の郷百選に選ばれた由緒ある御清水は、大野市の誇りであり、これからも多くの人々に愛され続けるでしょう。

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