御葬司

御葬司について

御葬司（ごそうし）は、古代日本において、天皇や皇后などの葬儀を執り行うための臨時の官職であり、葬儀の各種の領域にわたり多くの役職を持つ重要な役割を担っていました。大宝2年（702年）の持統天皇の崩御をきっかけに、正式に設けられたこの職務は、葬儀の準備や運営を円滑に進めるために必要不可欠な存在でした。

任命と役職の概要

御葬司の設置に際しては、いくつかの関連する役職が同時に任命されました。最初は、御装長官と造御竈長官が任じられ、その下に副官や政人、史官が配置されました。役職の中でも特に重要なのが、次のような役割を果たす官職です。

1. 御装束司

御装束司は、葬儀に必要な一切の設営と事務を担当する役職です。特に、葬儀の実施においては、これまで数名の御葬司がこの役割を担ってきました。タスクが非常に複雑なため、時には10人以上が一つの葬儀の準備に当たることもありました。

2. 造御竈司

この役職は火葬の設営を行うことに特化しており、持統上皇と文武天皇の葬儀においてのみ任じられました。特に火葬の重大性から、適切な準備が求められました。

3. 山作司

山作司は墳丘、すなわち山陵の築営を担当する役職であり、文武天皇以降の葬儀において設置されました。この職は、きちんとした墓地を作ることが死者への敬意を表すための重要な要素とされていました。

4. 養役夫司

養役夫司は、葬儀に必要な労働者の糧食や報酬を担当する役職で、元正上皇の時代に新たに設置されました。この役職があることで、労働者たちの労働環境がより整えられ、葬儀準備が効率的に進められました。

5. 作（造）方相司

この役職は悪霊を払うために、葬送行列の先導を行う役割を持ち、聖武上皇から光仁上皇、桓武天皇の時期に設置されました。神聖な儀式が行われる際には、この役職が特に重要視されました。

6. 前後次第司

葬送の行列における秩序を守る役職で、光明皇太后の葬儀の際に初めて設置されました。この役職は「御前次第司」と「御後次第司」に分けて任命され、葬儀の流れをスムーズに進めるために重要な役割を果たしました。

7. 作路司

葬送の通り道である道路や橋を整備する役職で、称徳天皇の大葬の際に初めて設けられました。葬送が行われる際には、その道の整備が重要であり、この役職が必要とされました。

任命と変遷

各役職の人員は時期や事情に応じて変動しましたが、通常、御装束司と山作司は五位以上の官人から構成され、その長は公卿あるいは親王が任命されました。養役夫司、作路司、作方相司は、主に四位か五位の官人が一人から数人任じられることが一般的でした。

光明皇后の葬儀においては、前後次第司には特定の官人が割り当てられ、行列の秩序を保つための指導的役割が果たされました。これらの制度は宇多天皇以降、葬儀の簡素化が進み、自然と消滅していきました。

ただし、『延喜式』においては、親王や大臣が亡くなった際に装束司や山作司が任じられる規定が存在したものの、その実施は葬家からの辞退により行われることはなかったのです。中国の影響を受けた古代日本の葬儀文化は、時代とともに変遷していきましたが、御葬司の役割は、古代政権における重要な位置を占めていたことが伺えます。

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