御薬園

会津松平氏庭園「御薬園」：歴史と薬草が息づく名勝

福島県会津若松市にある御薬園は、江戸時代に会津藩によって作られた由緒ある庭園です。国の名勝にも指定されており、その美しい景観と歴史的背景は多くの人々を魅了しています。

御薬園の歴史

御薬園の起源は室町時代に遡ります。永享4年（1432年）に蘆名盛久がこの地に別荘を建てたのが始まりとされています。江戸時代の寛文10年（1670年）には、会津藩2代藩主の保科正経が領民を疫病から救うため、園内に薬草園を設けました。3代藩主の松平正容は、貞享年間に朝鮮人参の試植を奨励し、その栽培を民間に広めたことから、「御薬園」という名前が付けられました。

現在の庭園は、元禄9年（1696年）に松平正容が庭師の目黒浄定を招き、小堀遠州の流れを汲む大名庭園として大規模な改修を行ったものです。戊辰戦争の際には、園内の楽寿亭や御茶屋御殿が新政府軍の診療所として使用されたため、戦火を免れました。昭和7年（1932年）には、江戸時代を代表する大名庭園として国の名勝に指定され、昭和54年（1979年）には旧薬園跡や池水取入口などが追加指定されています。

庭園の構成

約1.7ヘクタールの敷地内には、心字の池を中心に、亀島や楽寿亭が配置されています。池の周りには巧みに石が配され、女滝や男滝が流れ込むように設計されています。モミ、スギ、マツなどの大木が点在し、キャラボクやゴヨウマツの古木が植えられています。東側の背炙山の連山を背景にした借景は見事であり、回遊式の園路を散策しながら、四季折々の風景を楽しむことができます。

心字の池の西側には、元禄9年（1696年）に建てられた茅葺きの御茶屋御殿があります。御殿の北側に連なる亜鉛葺きの松ノ間と二階屋は、明治15年（1882年）に最後の会津藩主である松平容保の住まいとして増築されたもので、現在は茶会などに利用されています。庭園の北側には、藩政時代の薬草栽培地跡を利用した薬用植物標本園があり、会津産の薬草約200種を含む約400種の薬草が栽培されています。庭園の北西側には、松平容保の孫にあたる秩父宮妃勢津子ゆかりの建物である重陽閣（ちょうようかく）が移築されています。

現在の御薬園

御薬園は、かつて会津松平家の所有でしたが、平成3年（1991年）に会津若松市に譲り渡されました。現在では、市民や観光客に親しまれる庭園として、その美しい景観を保ち続けています。開園時間は午前8時30分から午後5時まで（入園は午後4時30分まで）で、臨時休園日もあります。アクセスは、JR会津若松駅からまちなか周遊バス「ハイカラさん」で「御薬園」下車です。

御薬園は、攬勝亭庭園や可月亭庭園とともに会津三庭園の一つに数えられていましたが、攬勝亭庭園は宅地化されています。

御薬園は、歴史と自然が調和した美しい庭園であり、訪れる人々に癒しと安らぎを与えてくれます。会津若松を訪れる際には、ぜひ足を運んでみてください。

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