復讐するは我にあり

『復讐するは我にあり』

概要

『復讐するは我にあり』（ふくしゅうするはわれにあり、Vengeance Is Mine）は、著者佐木隆三による長編小説である。この作品は、日本の実際の連続殺人事件である西口彰事件を基にしており、1975年に発表された。この小説は、第74回直木賞を受賞し、その後1979年には映画化されるなど、広く評価されている。また、1984年と2007年にはテレビドラマ化もされ、さらなる注目を集めた。佐木は、トルーマン・カポーティの『冷血』を意識して本作を執筆し、タイトルは新約聖書から取られた言葉を引用したものであり、悪人への報復は神によるものであることを示唆している。書き下ろし作品として講談社から出版され、2007年には改訂版が弦書房から登場した。

ストーリー

物語の舞台は昭和38年の日本。人々は、連続殺人犯の榎津巌（えのきづ いわお）に恐怖を抱いていた。榎津は、詐欺師であり、キリスト教のカトリック信者であった。彼は「俺は千一屋だ。千に一つしか本当のことは言わない」と自称し、5人を殺害した真実の裏に隠れながら警察の捜査から逃げ続けた。彼は、約78日間にわたって逃亡を続けた後、昭和39年に熊本で逮捕され、53歳で処刑される。

彼の生活は、病の母とクリスチャンの父との家庭背景で構成されていた。家族は旅館を経営し、榎津の妻と子供とも同居していた。榎津の妻である加津子は、義父に心酔し、彼との関係に疑惑を抱く榎津との緊張が生まれていた。彼が逃走中に行った一連の犯罪は、弁護士を装い金品を奪う詐欺から始まり、最終的には人々の命を奪う凶悪な行動に発展していく。

榎津は、浜松の旅館に大学教授を装って宿泊し、その女将であるハルと密接な関係を築く。しかし、彼の正体がニュース映画で明らかになり、ハルは彼をかくまうことを決意する。結局、榎津はハルとその母を殺害して逃走を果たすが、彼の行動は次第に追い詰められていく。彼の逮捕は、実際の目撃者によってなされ、最終的に死刑を宣告されることとなる。

映画化

小説の映像化を巡っては、今村昌平監督が映画化権を取得し、副製作を松竹が行うことになった。映画は1979年に公開され、注目を浴びた。脚本は馬場当と池端俊策が共同執筆し、主演には緒形拳が起用された。映画は当時の社会情勢とも重なり、観客に強い印象を与えた。特に「惜しくない　俺の一生こげなもん…」とのキャッチコピーは、観客の心に深く残った。

作品は良好な興行成績を収め、松竹にとっても大きな利益をもたらした。このヒットによって、今村プロダクションは財政的な安定を取り戻し、次作への制作も進められた。

テレビドラマ

『復讐するは我にあり』は1984年と2007年にテレビドラマとしても制作されている。1984年版はTBSで放送され、主演に根津甚八が起用された。また、2007年版はテレビ東京で放送され、柳葉敏郎が榎津巌役を演じ、より詳細なストーリーが展開された。

受賞歴

映画版は、第22回ブルーリボン賞を受賞し、監督賞や助演女優賞など多くの部門で評価を受けた。作品はキネマ旬報ベストテンでも高い評価を得ており、日本映画界における重要な作品の一つとなった。

このように、『復讐するは我にあり』は、リアルな犯罪を題材とした作品であり、その深いテーマと人間の暗い一面を描くことで、観る者に強い印象を与える作品である。

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