微笑の儀式

微笑の儀式

「微笑の儀式」（びしょうのぎしき）は、日本の作家松本清張による小説で、1967年に『週刊朝日』で連載され、その後9月に「黒の様式」として光文社から出版されました。この作品は、大学で法医学を専攻する主人公、鳥沢良一郎が織りなすミステリアスで独特なストーリーが魅力です。

あらすじ

物語は、奈良にある法隆寺の飛鳥仏を訪れた鳥沢が、そこで見知らぬ男と出会うところから始まります。男は、自身を止利様式の仏像の「古拙の笑い」に魅了された彫刻家と名乗ります。この出会いが、後の展覧会で展開される事件の導入となるのです。

秋のある日、鳥沢は新聞に「微笑」と題された彫刻の展覧会評を見つけて、興味を持ち会場へ向かいます。そこで彼が見た彫刻は、まさしく彼があの時に出会った彫刻家、新井大助の作品でした。しかし、作品には奇妙な運命が秘められていました。

彫刻の顔が実物大であり、まるで実在する人間の顔からそっくり取られたかのようだと、生命保険会社の調査員が指摘します。そして、驚くことにその顔の持ち主である宅間添子という女性が最近死亡し、その遺体は微笑んでいたというのです。

この不気味な「微笑」の背後には、どのような秘密が隠されているのか、鳥沢は事態を解明しようと奮闘することになります。

エピソード

この作品における著者の試行錯誤は、担当編集者の重金敦之によって語られています。彼は、登場人物の死因を描くにあたって「アルカイックスマイル」を残して死ぬ方法を思案したと言います。松本清張の独特な世界観を追体験しつつ、彼の作品が持つ魅力や深淵なテーマに触れることにも苦労したようです。

テレビドラマ化

1995年には、この小説を原作としたテレビドラマが放映されました。「松本清張スペシャル・微笑の儀式」として日本テレビの火曜サスペンス劇場枠で放送され、視聴率は18.7％という高い数字を記録しました。ドラマは主人公が過去の彫刻家を思い出す形で進行し、原作の持つ緊張感やミステリー性をうまく描写しています。

キャスト

• - 鳥沢良一郎：役所広司（法医学者）
• - 新井大介：内藤剛志（彫刻家）
• - 宅間添子：佳那晃子（被害者）
• - 島上忠太郎：石丸謙二郎（保険会社調査員）
• - 宅間平造：織本順吉（添子の父）

この他にも多くのキャストが出演しており、物語を一層引き立てています。

スタッフ

• - 脚本：金子成人
• - 監督：長尾啓司
• - 音楽：佐藤允彦
• - 撮影：羽方義昌

このように、「微笑の儀式」は松本清張の作品の中でも特に印象深いものの一つであり、彼の持つ独特の視点と深い哲学が随所に反映されています。

もう一度検索