徳島海軍航空隊

徳島海軍航空隊とは

徳島海軍航空隊は、大日本帝国海軍の航空隊の一つで、主に戦闘機搭乗員の教育を目的として設立されました。しかし、戦局の悪化に伴い、特攻作戦にも参加することとなりました。この航空隊は、その短い歴史の中で、教育訓練から実戦投入まで、激動の時代を象徴するような変遷を遂げました。

設立と初期の活動

太平洋戦争開戦当初、南方への侵攻作戦が順調に進む中で、航空戦力の拡充が急務となりました。そこで、昭和16年に完成した徳島飛行場に、実用機訓練を行うための航空隊として、徳島海軍航空隊が開隊されました。当初は、戦闘機の実用機訓練に特化した部隊として、搭乗員の育成に尽力していました。

具体的には、土浦海軍航空隊から予科練の入隊者を受け入れ、飛行訓練を実施しました。昭和17年には予科練甲飛の入隊者も迎え、訓練体制を強化しました。しかし、戦局の悪化とともに、その役割は変化していくことになります。

戦局の悪化と特攻作戦への転換

昭和19年に入ると、徳島海軍航空隊は偵察専修生の初歩訓練部隊へと改編されました。さらに、低速の練習機「白菊」を用いた特攻作戦に従事することになります。白菊隊は、高知海軍航空隊との連合部隊として、沖縄戦後期に特攻作戦を敢行しました。これは、戦況の悪化に伴い、戦力不足を補うための苦肉の策でした。

昭和20年3月には、作戦実施部隊へと改編され、第十航空艦隊の指揮下に入りました。夜間特攻訓練を開始し、同年5月には白菊全機が特攻機に指定され、本格的な特攻訓練が開始されました。

沖縄戦での特攻作戦

徳島海軍航空隊は、沖縄戦において、高知海軍航空隊と共同で、特攻作戦に参加しました。この作戦は、「菊水作戦」と呼ばれ、多くの若者が特攻隊員として出撃し、命を落としました。白菊は、その低速性から、敵艦に到達することすら困難な状況でしたが、それでも多くの特攻隊員が、祖国のために出撃しました。

1945年5月24日、「菊水七号作戦」が発動され、徳島海軍航空隊と高知海軍航空隊の共同で白菊20機が出撃しました。この作戦では、揚陸艦と輸送駆逐艦を撃破する戦果を挙げましたが、8機が未帰還となりました。翌日も同様の作戦が続行されましたが、天候不良で断念し、さらに10機が未帰還となりました。5月27日には、「菊水八号作戦」が発動され、白菊20機が出撃し、駆逐艦ドレクスラーを撃沈しました。6月には「神風特攻隊徳島第五白菊隊」が出撃しましたが、戦果は上げられませんでした。その後、鹿屋飛行場の白菊隊は全機出撃しましたが、これも戦果を上げることができませんでした。

6月の段階で、白菊隊は全滅し、徳島の本隊も稼働機が払底しました。これにより、徳島海軍航空隊は実質的に活動を停止しました。この特攻作戦での多くの犠牲は、戦争の悲惨さを物語るものであり、二度と繰り返してはならない教訓として、後世に語り継ぐべき歴史的事実と言えるでしょう。

戦後の徳島飛行場

戦後、徳島飛行場は連合軍に接収された後、民間と海上自衛隊が共用する飛行場として活用されています。海上自衛隊の小松島航空基地は、かつての小松島海軍航空隊跡地に設置されました。徳島基地は、当初は対潜哨戒部隊でしたが、現在は教育航空隊が中心となり、頻繁に離着陸訓練が行われています。この訓練の激しさから、民間機の就航数が四国最低であるにも関わらず、総離着陸回数は四国一を誇っています。

また、長年にわたり無事故記録を更新し続けており、その安全管理体制の高さが窺えます。徳島飛行場は、戦時中の悲劇を乗り越え、平和利用の象徴として、現在も重要な役割を担っています。

主力機種

九六式艦上戦闘機：戦闘専修生練習隊時代の練習機として使用されました。
白菊：偵察専修生練習隊時代の練習機であり、特攻機としても使用されました。

歴代司令官

小西成三 大佐：昭和17年4月1日 - 不明
高橋農夫吉 大佐：昭和18年7月15日 - 不明
川元徳太郎：昭和18年10月1日 - 戦後解隊

参考文献

『日本海軍編制事典』（芙蓉書房出版　2003年）
『航空隊戦史』（新人物往来社　2001年）
『日本海軍航空史2』（時事通信社　1969年）
『戦史叢書　海軍航空概史』（朝雲新聞社　1976年）
『航空戦史雑想ノート』（個人ブログ）
* 『連合艦隊海空戦戦闘詳報別巻1』（アテネ書房　1996年）

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