1917年に設立された徳川
生物学研究所(略称:徳研)は、尾張徳川家の第19代当主である
徳川義親によって、日本における
生物学の研究と奨励を目的に創立されました。この
研究所の源流は、
1914年に設置された植物学研究室にさかのぼります。この研究室は麻布富士見町に所在し、義親が植物に関する研究を行っていたことが始まりです。
1918年5月には
東京府荏原郡平塚村小山(現・
品川区武蔵小山)に本格的に開所し、その後
1932年には
東京市豊島区目白に移転しました。この
研究所の目的は、
明治維新以降急速に発展していた産業の一環として、
生物学の研究に対する理解と投資を進めることにありました。設立当初は、植物細胞学の専門家である
桑田義備が所長を務めましたが、後に徳川自身がその管理を行うようになりました。
研究の発展
研究所は本館や小温室、動物飼育舎を有し、広大な実験用圃場も敷地内に設けられていました。
1919年には、徳川が自ら所長として指揮を執り、その後、
1923年に服部広太郎が新たな所長に就任しました。この期間、著名な
生物学者たちが評議員として名を連ね、研究活動が高度に推進されました。
研究所の活動は順調に進み、
1925年には
昭和天皇が開設した
生物学御
研究所が徳川
研究所をモデルにしたと言われています。このように、成立初期から研究の質において高い評価を受け、国内外に広く知られるようになりました。
移転と戦時中の活動
1931年に経営が
財団法人尾張徳川黎明会に移管されましたが、翌年
東京市目白に新たに完成した建物に移転しました。戦中においては、陸軍との関係から研究テーマが変更され、軍への援助が求められるようになりました。
戦後の経緯
戦後、尾張徳川家は財産税の影響とともに、大きな資産を失いました。さらに当時の
研究所が依存していた南満州鉄道の株券も価値を失い、経済的な困難に直面しました。そのため、
文部省や外国の財団からの研究費の拠出が必要とされました。この時期、
田宮博や柴田和雄が研究員として加入し、
1970年には田宮が
クロレラの大量培養研究で大きな業績を挙げ、
研究所の名声を高めました。彼の研究は、当時の食糧危機を解決する方法として注目を集め、大衆の視線を一層引き寄せました。
1970年に徳川黎明会は、
研究所の存在意義が薄れたとして閉鎖を決定し、
研究所は
ヤクルト本社に譲渡されることとなりました。
業績と評判
戦前には、
田宮博を中心とする研究チームによる呼吸酵素チトクロームの研究が国際的に評価され、日本における植物生理学の地位を高めることとなりました。義親自身も研究を行い、多数の論文が発表されました。戦後の注目の研究としては、
クロレラの大量培養があり、この研究が世界の食糧問題に寄与する可能性が強調されました。
研究成果
研究所の成果は『徳川
生物学研究所輯報』として出版され、研究の質を示す資料として後の研究者にも影響を与えました。このように、徳川
生物学研究所は日本における
生物学の発展に重要な役割を果たしてきましたが、閉鎖後もその業績は研究界で高く評価されています。