心拍数 (山崎まさよしの曲)

心拍数（山崎まさよし）

楽曲「心拍数」（しんぱくすう）は、シンガーソングライター、山崎まさよしが手掛けた作品である。この曲の原曲は、1996年4月1日に発表されたアルバム『アレルギーの特効薬』の中に収められている。

その後、「心拍数」は山崎まさよしの通算13枚目のシングルとして、2002年5月29日にポリドール・レコードよりリリースされる運びとなった。このシングル盤に収録されたのは、スタジオ録音ではなく、実際のライブでの演奏を記録したライブテイク音源である点が大きな特徴となっている。

このシングルは、山崎まさよしが行ったツアー「Transit Time」における数多くのライブ録音の中から厳選された音源を用いて構成された。特に注目すべきは、単一の通常盤に加え、日本全国を9つの地域に区分し、それぞれの地域に合わせた内容を持つ期間限定の地域限定盤が同時に市場に投入された点である。この地域限定盤は、販売された全ての形態がオリコンチャートの週間シングルランキングにおいて50位以内にランクインするという快挙を達成した。

これは当時のオリコン史上において、単一のアーティストが週間シングルランキングのトップ50内に同時に10作品（通常盤1種と地域盤9種）を送り込むという、前例のない記録を樹立した歴史的な出来事であった。この前代未聞のリリース形態とそれに伴うチャートアクションは、音楽業界内外で大きな話題を呼んだ。

シングル発売と同日には、ツアー「Transit Time」の模様をさらに網羅した2枚組のライブ・アルバム『Transit Time』もリリースされており、ライブツアー全体の記録としても関連性の深い作品となっている。

テレビ番組においては、TBS系で放送されていた音楽チャート番組『COUNT DOWN TV|COUNT_DOWN_TV』での取り上げられ方が特筆される。当時の一般的な慣習では、同一楽曲の複数形態は合算して集計されることが多かったが、この「心拍数」地域盤は、それぞれが独立した作品として個別にチャートにランクインし、番組内で紹介された。さらに番組独自の配慮として、それぞれの地域版シングルが紹介される際には、その地域ならではの美しい風景や伝統的な行事の映像が背景に添えられるというユニークな演出が施された。これは、地域に密着した販売戦略を採った本作への、番組側の敬意とも取れる対応であった。

シングルに収録されたトラックは、通常盤と地域盤で大きく異なる構成となっている。通常盤には、特定の会場（倉敷市民会館）で収録された「心拍数」のライブ音源に加え、山崎まさよしの代表曲である「One more time, One more chance」と「セロリ」のライブバージョンがカップリングとして収められている。

一方、9種類存在する地域限定盤は、それぞれが非常に多様な内容となっている。各地域の限定盤には、その地域で行われた「Transit Time」ツアーの中から選ばれた、異なる会場での「心拍数」のライブ音源が収録されている。さらに、カップリング曲もそれぞれの地域盤で異なり、ライブ演奏されたバラエティ豊かな楽曲が収められている。これに加えて、各盤にはライブで披露された印象的なMCトークを抜粋した「特選MC」と銘打たれた音声トラック、そして「ミスペラーズ・オン・ステージ」や「rehearsal session」といった、通常の音源作品ではあまり聴くことのできない、ツアーの裏側やユニークな企画を収めたトラックが盛り込まれており、リスナーはそれぞれの地域盤から異なる角度でツアーの空気や山崎まさよしのエンターテイナーとしての側面を感じ取ることができる仕様となっていた。

このシングル「心拍数」は、単なる楽曲のライブバージョンリリースに留まらず、革新的な販売戦略とメディアでの特別な扱われ方、そして記録的なオリコンチャートアクションによって、山崎まさよしのキャリアにおいても、また当時の音楽ソフト市場においても、極めてユニークで記憶に残る作品として位置づけられている。ツアー「Transit Time」の熱気と多様性を凝縮したこのシングルは、多くのファンにとって貴重なアイテムとなった。

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