アレルギーの特効薬

『アレルギーの特効薬』（アレルギーのとっこうやく）は、シンガーソングライター山崎まさよしにとって初のオリジナルアルバムとして、1996年 4月1日にポリドール・レコードから発売されました。

本作は、構想からレコーディングまで約2年もの歳月を費やして完成しました。CDの帯には「天才より凄い奴!デビュー」というキャッチコピーが記されており、当時の期待の大きさがうかがえます。アルバムの英語表記は「Specific of Allergy」となっています。

特筆すべきは、その制作手法です。当時の音楽業界ではまだ非常に珍しかった、パソコンを用いたハードディスクレコーディングが全面的に採用されました。この先進的な技術により、一音一音に豊かな厚みが加わり、音の粒立ちが非常にクリアで情報量が多く、高解像度な音質を実現しています。そのサウンドは、聴く者の耳だけでなく、体や心にも自然と浸透していくような、透明感がありながらも密度の濃い内容に仕上がっています。

また、本作の特徴の一つとして、楽曲のタイトルや歌詞に食べ物を連想させる言葉が数多く登場する点が挙げられます。「中華料理」「週末には食事をしよう」「パンを焼く」といったタイトルはその代表例です。この点について、山崎まさよし自身は冗談めかして「曲を作っていた頃はまだ経済的に余裕がなく、いつもお腹をすかせていたからではないか」とコメントしています。

CDのジャケット（帯を含む）やCDラベルのデザインおよび印刷は、ドイツで行われました。これも当時の制作におけるこだわりを示すエピソードと言えるでしょう。

発売から11年後の2007年12月19日には、ボックス仕様のアナログ盤としてもリリースされています。

収録曲

特記なき曲は編曲も山崎将義。

1. 月明かりに照らされて
2. 窮鼠猫を噛め
3. 心拍数
4. 中華料理
5. 週末には食事をしよう
6. 坂道のある街
7. アレルギーの特効薬
8. パンを焼く
9. 関係ない
10. 妖精といた夏
11. 根無し草ラプソディー

楽曲解説（抜粋）

月明かりに照らされて: デビューシングルであり、セゾンカードインターナショナルのテレビCMイメージソングとして広く知られました。2010年のライブ音源は、26枚目のシングル「HOBO Walking」のカップリングにも収録されています。
窮鼠猫を噛め: 限定ライヴ・シングル「心拍数（関東編）」のカップリングとして発表された楽曲です。
心拍数: この楽曲には、ライブテイクを収録したライブ盤が存在し、通常のアルバムとは別に、収録テイクが異なる9種類の地方別盤が同時に発売されるというユニークな展開を見せました。
中華料理: 2枚目のシングルとしてリリースされました。アルバムには前奏の異なるバージョンで収録されています。タイトルにちなんで、中華料理店で撮影されたミュージック・ビデオも制作されました。
週末には食事をしよう: 2枚目のシングル「中華料理」のカップリング曲です。こちらもアルバムには別バージョンで収録されています。
坂道のある街: 山崎自身がインタビューで、上京した頃に住んでいた横浜市桜木町や野毛山動物園周辺の風景をイメージして作った曲だと語っています。
妖精といた夏: 4枚目のシングル「One more time, One more chance」のカップリングとして収録されました。ただし、2007年に再リリースされたアナログ盤ボックスには収録されていません。

参加ミュージシャン

山崎まさよし：Vocal, Chorus, Acoustic Guitars, Electric Guitar, Blues Harp
中村キタロー：Electric Bass, Computer Programming, Keyboards, Chorus, Voice
小田原豊：Drums, Percussions
間宮工：Electric Guitar, Mandolin
ライオン・メリィ：Piano, Accordion
中島オバヲ：Congas
瀬戸谷芳治：Organ
柿崎洋一郎：Synthesizer
片山広明：Tenor & Baritone Saxophones
Yoshida-kun & His Friends：Children's Voices
連野城太郎 (森川欣信)、高橋良一、穂苅太郎：Chorus

関連作品での収録

本作収録曲は、山崎まさよしのその後のベストアルバムやライブアルバムにもたびたび収録されています。

ベストアルバム『BLUE PERIOD』には「月明かりに照らされて」「心拍数」「中華料理」が収録。
ベストアルバム『OUT OF THE BLUE』には「週末には食事をしよう」が収録。
ライブアルバム『ONE KNIGHT STANDS』には「月明かりに照らされて」「アレルギーの特効薬」「パンを焼く」が収録され、初回限定版にはさらに「心拍数」「中華料理」も追加収録されました。
ライブアルバム『Transit Time』には「月明かりに照らされて」「パンを焼く」が収録。
* ベストアルバム『The Road to YAMAZAKI 〜the BEST for beginners〜』には「パンを焼く」「関係ない」が収録されています。

これらの収録状況からも、『アレルギーの特効薬』が山崎まさよしにとって重要な作品であり、その後のキャリアにおいても代表曲が多く生まれたアルバムであることがわかります。

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