心霊音THE MOVIE

『心霊音THE MOVIE』（しんれいおん ザ ムービー）は、2010年に発表された日本のオリジナルビデオ作品です。洋画カルト作品の販売を手がけるWHDジャパンが製作した一連のオリジナルビデオシリーズにおける第四弾にあたります。

本作は、前作『サイコ・イコール』からおよそ一年間のブランクを経て、阿見松ノ介監督が復帰第一弾として手掛けました。これまでの劇映画形式とは一線を画し、心霊現象の取材と検証に焦点を当てたドキュメンタリースタイルを採用しています。

物語は、映画監督である阿見松ノ介のもとに舞い込んだ一通の依頼メールから幕を開けます。それは、心霊現象が頻発すると噂される特定の建物に関するものでした。過去にその場所で発生したという事件と、それに複雑に絡み合う人間関係の謎が提示されます。謎が深まり、事態の深刻さに動揺するスタッフたちを引き連れ、阿見監督は様々な妨害を受けながらも、真相へと迫っていきます。そして、彼らがついに真相に到達したとき、本来ならばカメラに捉えられるはずのない存在たちの姿が記録されていたとされています。

撮影は、一台の通常カメラと三台の暗視カメラを用いて、その心霊ビルにて行われました。約17時間にも及ぶ撮影の末、ハイビジョンカメラを通じて9つの心霊映像を記録することに成功したと伝えられています。これは、ハイビジョン撮影による心霊映像としては世界初であるとされています。

また、本作の製作と並行して、心霊や怪奇現象に巻き込まれる人々の体験を描いた朗読コンテンツ「心霊音」シリーズが存在します。本作はその中のエピソードの一つ、「阿見松ノ介の心霊レポート」を映像化したものです。

主演は、阿見松ノ介監督本人を演じる松平哲郎、そして品川美月、松永美規が名を連ねています。その他、山川和役のみぶ真也、心霊研究家役の浅尾典彦、情報提供者役の前原誉宜、不動産業者役の沖一文字などが出演しています。

本作を巡る制作エピソードは数多く語られています。撮影中には、本物の幽霊が出現したという証言が相次ぎ、撮影が度々中断されました。特に、主演の品川美月は撮影後に何かに「呪われた」と感じ、京都の寺院でお祓いを受けたとも述べています。

編集作業においても、興味深い出来事が報告されています。撮り終えた映像を確認していた際、実際にそれらしき心霊現象が記録されており、そのシーンはそのまま本編に使用されました。しかし、その心霊現象と思われるシーンを拡大したりスロー処理を試みたりすると、編集ソフトがフリーズしてしまうというトラブルが発生し、作業が難航したといいます。

さらに、本編のサンプル映像を鑑賞した映画研究家や評論家のパソコンや電化製品が相次いで故障したという話も伝わっており、これが本作の「呪い」によるものではないかと噂されました。

低予算で製作されたことでも知られており、その総製作費は海外の類似作品と比較しても遜色ないとされますが、公式な発表はありません。監督の阿見松ノ介は自身のブログで、「低予算だからこそできるホラーがある」と述べており、製作費の制約を逆手に取った挑戦的な姿勢をうかがわせます。

キャストに関するユニークなエピソードも存在します。主演の松平哲郎は、長年阿見監督の助監督を務めていましたが、撮影開始のわずか2週間前に主役に抜擢されました。これは、過去に別の作品で臨時で演じた脇役での演技が監督の目に留まったためとされています。心霊研究家役の浅尾典彦は、作中で自身の著書を宣伝するシーンがあります。みぶ真也が撮影中に腰掛けていた新品の椅子が、彼の出番が終わった途端に突然足が折れて使用不能になったという出来事も報告されています。不動産業者役の沖一文字は、本来は釣り番組などに登場する人物でしたが、監督がその容姿（スキンヘッド、ピアス、サングラス）に目を付けスカウトしました。当初は知人の撮影現場への差し入れついでにエキストラとして参加する予定だったのが、現場到着後に本人が知らないうちに配役されていた、という経緯が彼自身のSNS（mixi日記）に記されています。

本作は、ドキュメンタリータッチのスタイルと、撮影現場や関連して起こったとされる数々の怪奇現象によって、公開当時話題を呼びました。

もう一度検索