忌部正通

忌部正通（いんべ の まさみち）について

忌部正通は、生没年不詳の南北朝時代の神道家です。著書『神代巻口訣』の作成年から、その時代に活躍した人物と考えられています。忌部氏の一族とされていますが、詳しい事績はほとんど明らかになっていません。官位を持っていたかどうかについても不明です。

思想の特徴

正通の思想は、儒教や仏教を異国のものとして排斥する一方で、儒学、特に宋学の理気説を神道に取り入れた点に特徴があります。彼は、神道を日本の真の宗教、正路であると位置づけ、独自の解釈を展開しました。

高天原の解釈: 正通は、高天原を空虚清浄な状態、人においては無一念の心の中と捉えました。
三柱の神の解釈:
天御中主神を明理の本源
高皇産霊尊を万物化成の神
神皇産霊尊を霊が降って生物の魂となる神
と解釈しました。さらに、これら三柱の神は国常立尊と同一の存在であると説きました。

他の思想との対立

正通の思想は、一条兼良の『日本書紀纂疏』における、神道、儒教、仏教は全て日本の宗教であり、本質的に一致するという見解とは対立しました。正通は、神道こそが日本の真の宗教であると主張し、その独自性を強調しました。

後世への影響

正通の思想は、江戸時代前期の忌部丹斎に大きな影響を与え、彼の思想は忌部神道として継承されていきました。正通の神道観は、日本の宗教思想史において重要な位置を占めています。

まとめ

忌部正通は、儒教や仏教を排しながらも、宋学の理気説を神道に取り入れるという特異な思想を展開した神道家です。彼の思想は、高天原や神々の解釈において独自性を持ち、後の忌部神道に大きな影響を与えました。彼の事績は多くが謎に包まれていますが、その思想は日本の宗教思想史において注目すべきものです。

関連情報

忌部正通 - コトバンク
忌部正通とは - 世界宗教用語

関連項目

神代文字
* 神道大系

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