神代巻口訣

『神代巻口訣』（じんだいかんくけつ / じんだいのまきくけつ）は、南北朝時代に忌部正通によって著された『日本書紀』神代紀の注釈書であり、全5巻で構成されています。単に『神代口訣』とも呼ばれることもあります。

本書は、正通が著した『日本書紀』の注釈書である『日本書紀口訣』全12巻の中から、神代紀に関する注釈部分を抜き出したものです。その特徴として、神代紀の上巻を6節、下巻を3節に、内容によって合計9節に分けて解説している点が挙げられます。

成立については、正平22年（貞治6年、1367年）とされていますが、近世の偽作であるという説も存在します。この点は、今後の研究によって明らかになることが期待されます。

内容としては、漢籍や仏典の知識を引用し、特に宋学の性即理説の影響が色濃く見られます。「明理」を重視する立場から、日本の永遠性を論じています。また、天御中主神、高皇産霊尊、神皇産霊尊の造化三神は、最終的には国常立尊という一柱の神に帰一するという独自の解釈を展開している点も注目されます。

『神代巻口訣』は、神代紀の解釈において、独自の視点と哲学的な考察を加えた重要な文献として、今日まで研究され続けています。古典注釈書として、また、当時の思想を知る上で、貴重な資料と言えるでしょう。

刊本

『日本書紀註釈（中）』（神道大系古典註釈編3）、神道大系編纂会、昭和60年（1985年）

参考文献

宮地直一・佐伯有義監修 『神道大辞典』第2巻、平凡社、昭和14年

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