志摩芸術村

志摩芸術村：幻のリゾート開発構想

志摩芸術村は、三重県鳥羽市浦村町に計画された、広大なリゾート開発構想でした。セゾングループの西洋環境開発の子会社である志摩東京カウンティが事業主体でしたが、平成不況の影響により、事実上計画は放棄されました。

概要

計画では、73.6haの広大な敷地に、以下の3つのゾーンを設け、滞在型のリゾートを整備する予定でした。

1. ビーチゾーン：鳥羽白浜海水浴場を中心に、ビーチハウスや遊歩道を整備。
2. タラソテラピーゾーン：日本初の本格的なタラソテラピー施設「タラサ志摩」を建設。
3. 芸術村：国内外の芸術家が交流・滞在し、創作活動を行える空間を整備。

芸術村の開発用地は、三重県庁の関連団体である財団法人三重県志摩開発公社が、パールロードの沿線開発のために先行取得していた土地でした。

沿革

1972年5月：志摩芸術村の建設事業体として、株式会社志摩東京カウンティが設立。
1982年：芸術村開発の第1弾として、鳥羽白浜海水浴場が開業。
1988年7月9日：三重県の総合的なリゾート開発計画「三重サンベルトゾーン構想」が国から承認を受け、志摩芸術村構想は「鳥羽地区」（海の情報と創作活動ゾーン）に位置づけられました。
1989年9月：芸術村ゾーンの土地造成がほぼ終了し、国内外から芸術家が視察に訪れました。
* 1992年8月：タラソテラピーゾーンの中核施設である「タラサ志摩」が開業。堤清二が肝いりで約250億円を投じた開発でした。

しかし、バブル崩壊の影響で集客・居住施設の建設は中断され、志摩東京カウンティは親会社の西洋環境開発に資金援助を仰ぐことになります。西洋環境開発は2000年7月に特別清算を実施し、資金供給が途絶えた志摩東京カウンティは2001年1月に民事再生法の適用を申請。これにより、志摩芸術村の開発は事実上停止しました。

志摩東京カウンティ

株式会社志摩東京カウンティは、かつて不動産賃貸業を営んでいた日本の企業です。2001年1月9日に東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請し、負債総額は191億6千万円でした。同年8月1日に美術品販売のアールビバンが買収し、タラサ志摩スパアンドリゾート株式会社に社名を変更しました。

計画と実際

ビーチゾーン

鳥羽白浜海水浴場にビーチハウスと遊歩道を整備する計画でした。鳥羽白浜海水浴場は現在も営業しており、遠浅の海と白い砂浜が特徴です。水質も良好で、毎年多くの海水浴客で賑わっています。

タラソテラピーゾーン

本格的なタラソテラピーが受けられる日本初の施設として、タラサ志摩が建設されました。タラサ志摩は開業後、経営母体が何度か変わり、2018年には大江戸温泉物語に譲渡されました。

芸術村

国内外の芸術家が交流・滞在しながら創作活動を行える空間を整備する計画でしたが、ほとんど実現していません。実際に建設されたのは、鳥羽市鳥羽一丁目から移転した海の博物館と、美術館の「志摩ミュージアム」のみです。

海の博物館

海の博物館は、日本の海の文化に関する資料を収集・保存・展示する博物館です。1992年に志摩芸術村の敷地内に移転しました。

志摩ミュージアム

志摩ミュージアムは、地元の芸術家の作品を中心に展示していた美術館でしたが、閉館しました。その後、俳優の岩城滉一が買い取り、「モーターサイクルパビリオン コウイチ・イワキ」としてバイクを展示していましたが、これも閉館し、現在は廃墟となっています。

志摩芸術村構想は、バブル経済の崩壊とともに幻と消えましたが、タラサ志摩や海の博物館など、一部施設は現在も営業を続けています。しかし、広大な敷地には未完成のまま放置された構造物も残っており、かつての計画の壮大さを物語っています。

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