西洋環境開発

西洋環境開発とは

西洋環境開発は、かつてセゾングループに属していた不動産会社です。その歴史は、西武グループ内の再編から始まり、積極的な不動産開発で成長を遂げましたが、バブル経済崩壊後の過剰投資が原因で経営破綻しました。この破綻は、セゾングループ全体の解体へとつながる大きな要因となりました。

前身：西武化学工業から不動産開発へ

西洋環境開発のルーツは、西武グループの創業者である堤康次郎氏の息子、堤義明氏率いる国土計画・西武鉄道グループから、弟の堤清二氏の西武百貨店・西友などの西武流通グループが分離した際に、西武化学工業が流通グループ入りしたことに始まります。当初、肥料製造を手掛けていた西武化学工業は、西武百貨店や西友が銀行融資を受ける際の担保力を高める目的で、西武百貨店が全株式を引き受け、グループ傘下となりました。

1972年、西武化学工業は不動産部門を西武都市開発として分離。さらに、西武百貨店の開発部門を独立させたディベロッパー西武を吸収合併し、不動産開発事業を本格化させました。田中角栄氏が提唱した列島改造計画による土地ブームに乗じ、清二氏と義弟の森田重郎氏の二人三脚で、全国各地で土地を取得しました。しかし、オイルショックによる物価高騰で土地は塩漬けとなり、多額の借入金が残るという状況に陥りました。

事業拡大と社名変更

その後、経営再建のため、東京テアトルや東海観光を傘下に収め、1986年には太洋不動産興業とシティ・クリエイトを吸収合併し、社名を「西洋環境開発」に変更しました。この頃には、日本郵船との業務提携や、ホテルエドモンドの運営参画、地中海クラブとの提携など、事業を多角的に展開し、業績を拡大させていきました。

個性的な住宅地開発

西洋環境開発は、汐見台ニュータウンや桂坂ニュータウンなど、個性的な住宅地開発で高い評価を得ました。また、「ヴィルヌーブ」ブランドで分譲マンションの開発・販売も行い、八ヶ岳高原海ノ口自然郷では音楽堂を建設するなど、新しいリゾート開発のモデルも確立しました。生活を楽しむ「生活遊園地」をコンセプトに開発された「つかしん」は、関西地区におけるセゾングループや同社の知名度向上に大きく貢献しました。

バブル経済とその終焉

堤清二氏は、小売業から脱却し「生活総合産業」を標榜して不動産開発に力を注ぎましたが、異母弟の堤義明氏への対抗意識があったとも指摘されています。バブル景気による過剰投資は、1994年度末には関連会社を含む負債総額が7,527億円にまで膨れ上がりました。経営が危機的状況に陥り、セゾングループによる支援も行われましたが、事態は好転しませんでした。

1997年以降、金融不安が高まり、負債は主要取引銀行の懸念事項となりました。メインバンクであった第一勧業銀行は、総会屋事件の混乱で、これまでの経緯や合意事項がほとんど反故となり、グループ内部の対立も深刻化しました。最終的に、2000年7月、臨時株主総会で解散を決議し、東京地方裁判所に特別清算を申し立て、事実上倒産しました。負債総額は約5,538億円に達し、この経営破綻はセゾングループ解体の大きな要因となりました。

主な開発物件とその後

西洋環境開発は、数多くの不動産開発を手がけました。

- 宅地造成地：七ヶ浜ニュータウン汐見台、桂坂ニュータウン、多田グリーンハイツ、花山手、しんえい四季のまちなど。
- 複合商業施設：つかしん（グンゼおよび西武百貨店との共同開発）。
- ホテル：ホテル西洋銀座。
- リゾート：八ヶ岳高原海ノ口自然郷、志摩芸術村、逗子マリーナ、サホロリゾートなど。

これらの開発物件のうち、八ヶ岳高原海ノ口自然郷は、現在セブン&アイ・ホールディングスの間接子会社である八ヶ岳高原ロッジが運営を引き継いでいます。また、サホロリゾートは、加森観光の子会社に買収されました。

子会社とその後

西洋環境開発には、以下のような子会社がありました。

- ハウスポート西洋：不動産仲介業。特別清算後、安信住宅販売が吸収。
- 西洋ハウジング：分譲地・マンションの販売代理業。特別清算後、ユニホーの子会社となり不動産仲介業に転換。
- 西洋コミュニティ：マンション管理会社。特別清算後、ユニホー子会社となり「ライフポート西洋」に社名変更。
- サホロリゾート：特別清算後、加森観光の子会社に買収。
- 西武ピサ、西武北海道、北海道西洋、尼崎自動車教習所、ホテル西武オリオン、志摩東京カウンティ、六甲環境計画

沿革

西洋環境開発の主な沿革は以下の通りです。

- 1949年：国土計画興業（後のコクド）が肥料部門を分離し、尼ヶ崎化学肥料を設立。
- 1960年：西武化学工業に商号変更。
- 1970年：西武流通グループ（後のセゾングループ）へ移管。
- 1972年：不動産開発部門を西武都市開発として分離。
- 1986年：西武都市開発が太洋不動産興業などと合併し、西洋環境開発に商号変更。
- 2000年：特別清算を申し立て事実上倒産。
- 2005年：特別清算終結、法人格消滅。

西洋環境開発は、セゾングループの隆盛と衰退を象徴する企業の一つであり、その歴史は日本の不動産開発史における重要な教訓となっています。

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