志摩電気鉄道10形電車

志摩電気鉄道10形電車

志摩電気鉄道10形電車は、1929年に志摩電気鉄道線開業に合わせて日本車輌製造本店で製造された6両（10 - 15号）です。志摩電気鉄道が製造した唯一の電車形式であり、その後の変遷を経て、最終的には近畿日本鉄道（近鉄）のモニ5920形・モニ5925形となりました。

概要

1920年代の日本車輌製造本店が地方私鉄向けに製造した標準的な半鋼製車体で、リベット接合と電気溶接を組み合わせた構造が特徴です。同時期の東美鉄道デボ100形と同形車です。窓は下降式で、窓配置は賢島寄りに荷物室を設けた独特のスタイルでした。

車体

車体長13m級の半鋼製車体で、リベット接合と電気溶接を併用し、外観は比較的すっきりとしていました。しかし、下降式の窓や補強用の帯材により、重厚な印象を与えるデザインでした。窓配置は1D(1)6(1)D(1)D'1dおよびd1D'(1)D(1)6(1)D1で、客室窓には保護棒が設置されていました。賢島寄りには楕円窓があり、デザイン上のアクセントとなっていました。

主要機器

主電動機

川崎造船所K7-1003-ARを各台車の内側軸に吊り掛け式で搭載していました。

制御器

簡素な制御器を搭載していました。

台車

日本車輌製造D-14形台車を装着していました。これは当時、私鉄向け電車で広く普及していた釣り合い梁式台車です。

ブレーキ

手ブレーキと空気ブレーキを搭載していました。

その他

集電装置は菱枠パンタグラフを1基搭載していました。連結器は柴田式自動連結器を採用していました。

運用

志摩電気鉄道線開業から1969年の志摩線改軌・架線電圧昇圧まで、40年以上にわたり主力車両として使用されました。一部車両は出力向上のため、1930年に主電動機を増設しました。

三重交通・三重電気鉄道時代

戦時統合により志摩電気鉄道が三重交通へ合併されると、車両番号が変更されました。戦時中は資材不足のため、窓を2分割するなどの対策が取られました。塗装も三重交通標準のツートンカラーに変更されました。車体更新修繕工事の際に、尾灯の増設や楕円窓の埋め込み、乗務員扉の設置などが行われました。

近畿日本鉄道時代

三重交通から分社された三重電気鉄道が近畿日本鉄道へ合併されると、再び車両番号が変更されました。1969年の志摩線改軌・昇圧の際、老朽化のため他線区への転用は行われず、1970年までに全車廃車となりました。

三重交通モ5210形

概要

1959年と1960年に、老朽化した10形の主要機器を流用して製造された車両です。モ5400形に準じた設計で、準新車として志摩線のサービス向上に貢献しました。

車体

名鉄3700系に準じたノーシル・ノーヘッダーの全金属製車体で、2段上昇式の側窓を備えていました。車体長はモ5400形より短縮され、窓配置も異なっていました。

主要機器

10形から流用した旧式機器を搭載していました。主電動機は川崎造船所K7-1003-AR、制御器はHL単位スイッチ式手動加速制御器を搭載していました。台車はD-14形台車を流用し、基礎ブレーキ装置を台車シリンダー式に変更したD-14改を装着していました。

運用

ク600形併結時には出力不足が否めず、1962年には一部車両が主電動機を増強しました。近鉄合併直前に塗装が近鉄標準色に変更され、合併時に改番されました。1969年の志摩線改軌後、養老線に転属し付随車化改造を受けましたが、1970年代に廃車されました。

主要諸元

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